投資に役立つ『全世界史』(19):ハブ空港・港湾の変化

1853年にペリーが浦賀にやってきた理由としては、筆者は学生の頃は捕鯨船の補給拠点として利用するためと学習した記憶がある。今もウィキペディアなどにもそう書かれているが、最近の研究では、これは浦賀開港のメリットの一部に過ぎず、より大きな目的があったという。

このシリーズは、出口治明(2018)『全世界史 下巻』新潮文庫より、読む過程で投資に役立つヒントとなると考えたものを紹介するものである。今回も前回と下巻第五部4章「ヨーロッパが初めて世界の覇権を握る」である。

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1853年当時、アメリカは英国(連合王国)に次ぐ大国になっており、貿易相手国として中国に着目していた。当時の大西洋航路はニューヨークから大西洋に出て英国を経由し、インド洋から中国に向かうものだった。そうすると、ニューヨークから英国までの距離が長く、輸送コストの面で絶対に勝てない。

アメリカが連合王国に勝つためには太平洋横断ルートを開くしかありません。地球は丸いので、アラスカ、ベーリング海、日本、中国へと行くルート、これがいちばん近い。現在の飛行機のルートも同様です。もし、このルートをアメリカ商船が使おうとすれば、交易の中継地は日本しかありません。つまりペリーがの来航目的は、かつて一部でいわれたように捕鯨船の基地が欲しかったのではなく、米中交易のために日本の開港が必要だったからです。

出口治明(2018)『全世界史 下巻』新潮文庫(p. 275)

普段メルカトル図法に見慣れていると意識し辛いが、多くの国際航路は北極圏を通るものである。アラスカのアンカレッジが貨物の国際ハブ空港として有名なのも、北側に位置するメリットが大きいからである。どこまで本気か分からないが、トランプ大統領がグリーンランドの買収に興味を持っているのも天然資源開発だけでなく軍事・輸送面での拠点とて価値を見出しているからだと思われる。

関連記事:グリーンランドの軍事的価値と国際ハブ空港の可能性

時代に応じて航空機にせよ船舶にせよハブの場所は変わっていくものである。それは国家の勢力図の入れ替わりにより重要な航路が変わるだけでなく、航行技術の進化などによっても変わってくる。

今後当面は(一部新興国の躍進を除いて)国家間のバランスが大きく変わるという想像はあまりできないかもしれないが、航空技術の発達によるハブの変化というのは十分に考えられる。

例えば超音速旅客機の開発を目指すBoom Supersonicは、コンコルドと同程度の速度(マッハ2.04)でありながらソニックブームはコンコルドの1/30程度を目指している。2020年1月には試験飛行やパイロット育成などを行なうFlight Research社との提携が実現し、今後テスト飛行に向けての開発が進んでいく予定だ。

参考[1]:WIRED「「超音速の旅」の実現が近づいてきた── 夢の旅客機の“復活”に向け、競争が白熱」2018年6月27日
参考[2]:テッククランチ「超音速旅客機開発のBoom SupersonicがFlight Researchと提携、XB-1実現に前進」 2020年1月22日

確かにBoom Supersonicのような超音速旅客機の開発には莫大なコストがかかるので、本当に実現するのか疑問はある。しかし、次世代型旅客機など20時間以上のフライトを可能にするような航空機や、超音速旅客機のような航空機などの利用が増えていけば、明らかに現在のハブ空港の配置は最適ではなくなるはずだ。

港湾においても、コンテナ貨物量上位の港といえば、2018年だと1位が上海、2位がシンガポールである。(参考:日本港湾協会「港湾物流情報」)製造拠点が多いことにより1~10位のうち7港が中国ではあるが、2位にシンガポールが入っているのはやはりその立地の良さである。

しかし、これが今後も続くとは必ずしも言えない。確かにシンガポールはインドなども射程に捉えた良いハブ港湾であるが、日本や中国からはやや遠い。ハブ港湾というのは必ずしも長期で続くとは限らないのだ。日本だって阪神大震災までは神戸港がアジアのハブだったのだ。

(尤も、筆者は歴史的にハブ港として地位を築いていたベトナム中部ホイアン、現代的にはその近郊のダナンに注目している。関連記事:ダナン港は歴史的に見て貿易拠点として優秀

或いは今後、よりインドが製造拠点として重要になっていけば、それに対応する貿易港が重要になってくる可能性もある。当然インドの港湾自体もそうだ。港湾投資などの場合、物流や技術自体の発展や変化にも着目しなければならない。

出口治明(2018)『全世界史 上巻』新潮文庫


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この記事の著者 HAL について

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