先日の記事で、米国がグリーンランドを欲しがっている理由の一つに軍事的価値があることを見た。
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グリーンランドの大部分は北極圏に属すほど北部に存在するので、北半球の多くの国との平均距離が近く、ミサイルの発射拠点として有効であるからだ。
しかし、同じ理由でグリーンランドは国際ハブ空港に拠点にもなると考えられる。
日本を中心としたメルカトル図法に見慣れていればわかりにくいが、冒頭のようなヨーロッパを中心とした地図で見れば、グリーンランドは北極圏にあるだけでなく、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸に囲まれた場所である。
北半球の長距離航路もメルカトル図法の最短距離ではなく、地球儀で考えれば分かるように、北側を通るのが最短距離である。
ハブ空港の概念は、多数の空港と接続することで航路の平均距離を短くするというものである。北極圏のハブ空港というのは、かなり有望と考えられる。
実際、北側にあるハブ空港の概念として発達したのがアラスカのアンカレッジ国際空港である。今でこそ旅客機でアンカレッジを経由することは少なくなったが、今でも貨物機にとっての重要な国際ハブ空港である。
グリーンランドはアラスカよりも北部にあり、しかもヨーロッパと米国に近いだけでなく南米やアフリカ大陸など南半球への射程も比較的短い理想的な立地である。アメリカがアラスカを買収したのと同様に、グリーンランドを買収したい意図としてハブ空港という意味合いがあっても不思議ではない。
無論、雪や氷の問題はあるが、近年は急速に氷が融解して開発しやすい状況になっており、日本でも青森空港といった豪雪地帯にあるような空港でも、迅速な除雪によって殆ど欠航が無いといった実例もある。現にアンカレッジ国際空港もまともに運用されているのであり、その点での心配は少ない。
もっとも、現時点ではトランプ大統領の思いつきのレベルであり、実際に買収交渉を行うにしても、長ければ交渉に数十年かかる大事業となろう。