米国の証券会社チャールズ・シュワブ系のシュワブ・ストック・プラン・サービスが2020年夏に行った調査により、パンデミックによる不確実性によって企業のストックオプションや株式報酬を行使した従業員が増えたことが分かった。
これはパンデミックによって経済的な見通しが不透明さや、株式市場のボラティリティの影響により、ストックオプションなどを行使する動きが増えており、同社が調査したオプション行使者1,000人の内、67%がパンデミックの影響を受けたと回答している。(通常は43%)
特に比較的若いミレニアル世代(概ね1980~1990年代生まれ)の方が、上の世代よりもパンデミックによる株式報酬の受け取り・売却の傾向が強く、95%が影響を受けたと回答している。一般的に若年層の方が経済的に苦慮している傾向が強く、株式市場が好調な中で株式報酬を受け取る傾向が強いと考えられている。
それだけでなく、ミレニアル世代の方が株式報酬やストックオプションを好む傾向が強いということも明らかになっている。下図左のように、今の職場を選んだ主要な要因として株式報酬を挙げたミレニアル世代の割合は、2019年の46%から、2020年には53%に増えている。
また下図右のように、全体で従業員の純資産の32%が株式報酬で占められているが、ミレニアル世代では43%に達するという。
一般に、従業員と長期的な関係を築き、従業員のモチベーションを上げる方法の一つとして、株式報酬やストックオプションは有効とされる。これは従業員持株会を利用した割引価格による株式購入なども似た効果があると考えられる。
日本では多くの上場企業が従業員持株会を採用しているが、投資金額や従業員参加率はフランスなどと比べて低いとされる。これは、日本企業の持株会が、動機付けよりも安定株主の形成という、どちらかと言えば企業側の都合が重視された制度になっているからである。(大湾)
米国のミレニアル世代が株式によるインセンティブを重視するという傾向が、そのまま日本の若い世代にも適用されるかは分からないが、多くの国で高年齢ほど保守的な傾向が見られることを考えれば、日本でも従業員の株式報酬やストックオプションについての選好を調査し、モチベーションアップの方法として制度を探究していく価値があるのではないかと思う。
参考文献[2]:大湾秀雄「従業員持株会の効用」野村資本市場研究所