これは凄い変化である。スアン・ドゥシット・ラーチャパット大学とスアン・ドゥシット・ポールが共同で行った世論調査によると、新型コロナウイルスに伴う自粛生活でタイ人の食生活が大きく変わっている。
4月26~29日に1,192人を対象に行われたオンライン調査によると、コロナ以前と比べて、
- 75.8%:自炊が増えた
- 71.7%:食品衛生に気を遣うようになった
- 60.0%:身体に良い食品だけを選ぶようになった
- 56.2%:食品包装を重視するようになった
- 49.9%:新型コロナウイルスへの抵抗力を高めそうな食品を摂取するようになった
といった回答が得られている。
全体的に健康に気を遣う変化だが、それにしても「自炊」が増えているのは驚きである。確かに、ロックダウンなどでそもそも営業していない屋台が増えていたことも多かったので、自炊せざるを得ない状況だったのは理解できる。しかし、驚いているのは、そもそもタイでは自炊の文化が無かったからだ。
タイでは世界的に見ても女性の社会進出が進んでいる国と言われ、女性が働くのが当然の社会である。専業主婦をして家の食事を用意していようものなら怠け者のレッテルを貼られるという社会だ。自炊をする人がいないわけではないが、どちらかと言えば中華系移民の文化が色濃い人であったり、タイ人であれば金持ちの道楽として料理をするといった感じである。
勿論、「自炊が増えた」と言ってもどれくらい増えたかは疑問である。調査では、バンコクでは1日当たりの食品支出は平均で226.74バーツだったが、パンデミック以前より支出が増えた人は39.4%、変わらない人で36.7%、減った人で23.9%だからだ。
タイでは下手に自炊すると屋台で食べるよりお金がかかってしまうので、支出変化だけで傾向を掴むことはできないが、この感じだと「生活に自炊を取り入れるようになった」程度だろう。(この状況下でタイに行けていないので正確にはなんとも言えない。)寧ろ、パンデミック終息後にどうなるかが見ものである。
参考文献:Suan Dusit Poll, “อาหารไทย” ในยุคโควิด-19, 2 May 2021(PDF)