大麻ビジネスに投資したいなら薬物としてではなく麻の用途の広さに注目すべき

昨年からカナダの大麻生産会社ティルレイ<NASDAQ: TLRY>をはじめとして大麻(cannabis)関連ビジネスへの投資が活況であり、銘柄によっては非常に割高な状態が続いているものもある。米国でも2018年12月の改正農業法で産業用大麻(hemp)の大規模栽培を容認する条項が含まれ、州レベルでも合法化が進んでいる。

アメリカなどでは今後もこうした流れが続き、関連するビジネスが成長していくとは思われるが、裏を返せば大麻ビジネスは規制次第とも言える。ちなみに筆者はネットスラングで言う嫌煙厨であり、どちらが安全かという点に関わらず大麻どころか煙草にも反対である。規制次第という観点では電子タバコも同様で、安全性について医学的に確定していない状況では少なくとも長期投資の観点ではリスクが高い。

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こうした理由から、いくら活況だと言っても大麻ビジネスの投資に参入する予定は無い。また、カナダやアメリカは既に大麻が蔓延しているが故の現状追認の流れであり、日本などで合法化の動きが進むとも思わない。

しかし、CBD(カンナビジオール)の供給源としてだけではなく、広く麻(hemp)として見ればその用途は幅広く、大きな可能性を持つものである。実際、CBDは大麻の花や葉から抽出するものであるが、種子など使える部分は大きく、麻の供給源が大きく広がることを意味する。ここではGreen Entrepreneurで掲載されたCBD以外の5つの用途を紹介する。

織物(fabric)

言わずとしれた繊維製品としての麻である。安っぽいイメージが強いのもあって繊維としてのシェアは低いが、麻は熱伝導性と通気性で優れており、清涼感を与えるものとして優秀である。

綿と比べて引っ張り強度や剛性が強いことも特徴で、特に大麻(hemp)は引っ張り強度で綿の8倍、耐久性で4倍の強度を持つ。一方で大麻は亜麻(linen)よりも繊維の太さのばらつきが大きいので加工面で課題は残るが、今後大麻が大量生産されることを考えれば、原材料としては有効である。

また、麻は1エーカー(約4000平米)当たり最大9.82トンの二酸化炭素を貯蔵できカーボンシンク(carbon sink)と呼ばれており、グリーンビジネスの観点でも期待できる。

バイオプラスチック

ストローが海洋汚染に繋がるなどプラスチックの問題に対する懸念が強いが、代用プラスチックとして開発が進んでいるのが、麻原料で作られたバイオプラスチックであるヘンプ・プラスチックである。

ヘンプ・プラスチックは、通常のプラスチックよりも強度が2倍以上と丈夫なので、自動車の車体などにも積極的に使われて始めており、今後も普及が進むと予想される。

建築資材

麻のパルプを利用した建築資材は強固で、特に荷重強度を高めたものはヘンプクリート(ヘンプ+コンクリート)と呼ばれる。また、防音性、断熱性、抗菌性、防カビ製、絶縁性など優秀な性質を持っているので、断熱材などとして既に広く利用されている。

大麻繊維のばらつきから考えれば、繊維としてよりも建築資材としての有用性の方が高いと思える。

石鹸

前述の抗菌性とも関連するが、多価不飽和脂肪酸を多く含むという大麻の性質が、石鹸としての用途も有効である。

紹介している記事の掲載元がGreen Entrepreneurという性質上、意図的に触れられていないのかもしれないが、大麻の種子から油(ヘンプオイル)は25~30%程度とアブラヤシの44~53%と比べれば効率は悪いが、 バイオディーゼルの原料としても注目されており、EUのアブラヤシの規制方針などから考えれば、より環境に優しい大麻が注目される可能性もある。

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バッテリー

これに関してはまだまだ研究開発途上であるが、麻の茎の中心部をカーボンナノシートに変換できることが発見され、軽量で効率的で環境に優しい蓄電材料として注目されている。

電気自動車などの普及においてはバッテリーの軽量化・小型化・効率化は大きな課題となっており、方向性の一つとしては面白い。

多用途性は大きな価値

多用途であることは大きな価値を持つ。特定の用途にしか役立たない物質は社会構造や産業構造、科学技術の変化によって価値が無くなってしまうこともあるが、幅広く用途があれば、より長く原材料として価値を維持できる可能性が高い。

短期投資において大麻油やCBDの原材料として大麻に注目するのは、それはそれで巧くやれば面白いだろうが、長期投資の観点では寧ろ麻としての多用途性に注目する方が良いと考えられる。

参考文献

Green Entrepreneur, “5 Other Uses for Hemp You May Not Know About”

BOKEN「亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)について」

JETRO「米国合法大麻業界に大きな変化」

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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