マレーシア、インドネシア、EUをめぐるパーム油の複雑な問題

要約

  • EUは環境保護を理由に2030年にかけてパーム油の段階的な廃止を検討
  • パーム油生産の85%を占めるマレーシアとインドネシアは強く反発
  • 環境問題、貧困削減、大豆油とのダブルスタンダード、新市場へのダンピングなど問題は根深い

EUはパーム油の利用削減にシフト。マレーシアは「保護主義政治」に反論(CNBC)

  • 2019年3月20日に欧州委員会は環境問題を理由に、パーム油を輸送燃料から段階的に廃止していくことを決定
  • 2030年までに再生可能エネルギーの割合を32%にまで引き上げる目標が背景
  • 欧州議会は法案を受け入れるかの決定に2ヶ月かかる
  • マレーシアとインドネシアで世界のパーム油生産の80%以上を占めており、生産農家、マレーシア政府、生産国協議会などから大きな反発が出ている

マレーシアは5月にベルギーへの訪問時にパーム油についての立場を説明する(BERNAMA)

  • マレーシアの一次産業大臣テリーザ・コック氏はEUの決定に対しての立場を説明するために5月にベルギーを訪問する
  • パーム油を温室効果ガス排出において「高リスク」と分類するEUの法案に反対する予定
  • 「マレーシアの政府機関による広報が不十分で、反パーム油NGOの活動に押されている」
  • 発展途上国に対して差別的かつ農家の生活に大打撃を与えるという見方が強い
  • マハティール首相は、法案が進められた場合、EUの輸出に対して報復措置を検討すると述べた

解説

パーム油はアブラヤシを原料とする世界で最も生産されている植物油で、食用油や石鹸などだけでなく、バイオ燃料としての利用も非常に多い。

EUは環境問題への対策が積極的であるだけでなく、パーム油にはマーガリンをはじめとしたトランス脂肪酸に関する問題もあるので、反パーム油NGOによるロビー活動が強力である。

EUの法案では、パーム油生産が森林減少を引き起こすとして、2023年から2030年にかけて段階的に廃止していくと記載されている。

一方でインドネシアのルフット・パンジャイタン海事担当調整大臣によると、パーム油の40%が小規模農家1,760万人によって生産され、貧困削減に大きく寄与している。

また、同大臣はEUをダブルスタンダードだと批判している。というのも、大豆油の生産にはパーム油の10倍もの農地が利用されているが、EUはその事に対して規制をせず、寧ろ大豆ディーゼルオイルを積極的に輸入しているからである。

また、マレーシアはアブラヤシの植え替えを進め、インドネシアは2011年から原生林の伐採の停止を延長し、アブラヤシ農園の新規許可も停止している。

南米との扱いや森林保護への取組みを無視した一方的な廃止を「差別的だ」として両国が強く反発している、というのが一連の流れである。

EUは中国に次いで二番目に大きなパーム油市場(インドと同じくらい)であり、その影響からマレーシアとインドネシアはWTOに提訴する意向を示している。インドネシア駐在EU大使ヴィンセント・ゲレンド氏は、EUのパーム油市場は開かれたものであり、WTO規則を遵守していると両国の批判を否定しているが、今後も対話を続ける姿勢を示している。

マレーシアの通産副大臣Ong Kian Ming(王建民)氏は日本や中東、東欧など新たな市場の開拓を進めていくと述べている。しかし、先日フィリピンは、マレーシアとインドネシアがアブラヤシやココナッツのダンピングを行っているとして、農業省は両国からのパーム油の輸入の一時停止措置を求めるなど、問題は多岐に渡って複雑化している。

参考文献

CNBC, “The EU moves to reduce palm oil use. Malaysia hits back at ‘politics of protectionism’”

BERNAMA, “Malaysia to explain palm oil stance in mission to Belgium in May”

The Edge Markets, “Philippines seeks temporary ban on palm oil from Malaysia, Indonesia”

South China Morning Post, “Malaysia and Indonesia threaten boycott of EU products, say millions of farmers risk losing livelihoods due to palm oil curbs”

ANTARA NEWS, “EU market open to palm oil: ambassador”

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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