CNBCが、マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツやGoogle元CEOエリック・シュミット、バークシャー・ハサウェイCEOウォーレン・バフェットなどビリオネアが絶対に犯さない(だろう)7つのミスをまとめ、億万長者になりたければ彼らの健全な経済的習慣を取り入れることが重要だと指摘している。
以下に紹介する7つのミスは米国人向けに書かれたものであり、一部は日本人投資家にとってはあまり意味の無い指針が含まれる。しかし、米国人がどのような特性を持ちやすいかというのを理解する上で役立つだろう。
1.手数料でお金を無駄にしない
記事で指摘される銀行手数料を無駄にしないというのは、日本人もやりがちな無駄であり、株式取引手数料や投資信託手数料など投資家的にも非常に重要な手数料が存在する。
しかし、ここで主眼となっているのは「期日通りに請求書を支払う」という行動指針である。
お金持ちの人は、手数料が時間の無駄(勿論お金も)であることを理解しており、期日通りに請求書を支払うことを心掛けています。彼らは生活必需サービス(筆者注:電気料金など)から住宅ローン、クレジットカードの請求書にいたるまで、遅延手数料がかからないように自動引き落としを駆使しているのです。
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我々からすれば当たり前だろうと思うが、これが第一の指針に入るというのが米国人の特性の一つとして興味深い。
2.自分のクレジットスコアを無視しない
クレジットスコア(信用偏差値)は米国で非常に重要であり、本来はクレジットカードの作成やローンを組む場合に使われる数値だが、今は就職や結婚などあらゆる社会活動に関わる個人の社会的評価軸となっている。
クレジットカードの使用履歴や返済履歴、借入残高などで300~850点で点数付けられ、760点以上はプライム層といってハイクラスのカードを作成でき、660~759点が一般層、659点以下がかの有名なサブプライム層である。
記事では、裕福な人は絶えず自身のクレジットスコアをチェックし、高い点数を保つために努力をしているという。クレジットスコア自体は非公開だが、今は収入やクレジットヒストリーなどから無料でスコアを予想するようなアプリなどがあり、前述の「期日通りの支払い」に加え「負債残高を低く保つ」ことの重要性が指摘されている。
サブプライムローン問題の時もそうだが、クレジットスコアが低いまま無理な借入れをするケースは相変わらず米国では蔓延している。あの時から規制は変わったが、米国人の特性はあまり変わっていないかもしれない。
3.衝動的に過ごさない
ウォーレン・バフェットは朝食には毎日、マクドナルドの同じもの食べて3.17ドル以上をかけない、ビルゲイツはマクドナルドのフィレオフィッシュを好むなど、お金を持っている割に生活が質素だとよく指摘される。
彼らは極端なケースかもしれないが、衝動的な支出を避けることで、無駄・浪費・借金を回避することができ、こうした生活習慣を身につけることが資産形成に寄与する、と指摘されている。これは米国人だけでなく多くの人が注意すべき指針かもしれない。
4.マーケティングの策略に嵌らない
世の中にはいたるところにマーケティング戦略が施されており、買い物をする際はその金額の多寡を問わず、購入前によく調べ、その費用対効果をよく考えることの重要性が指摘されている。
CNBCは別記事で、支出を抑制するための6つの指針を示している。
- Amazonなどでよく見られる販売価格より異様に高い「参考価格」を無視する
- 割引が効くギフトカードを使う
- 価格比較、購入時に適用されるクーポンコードの調査
- 「3つの法則」を知る
- バーゲンが最安値とは限らない(アウトレットの方が良い場合も)
- 買い物の時期を見計らう(季節の変わり目の安売りなど)
このうち、「3つの法則」は「ゴルディロックスの原理」を指しており、買い物客は3種類の価格の商品があれば真ん中の商品を選びやすい。しかし、多くの場合、中価格帯と低価格帯の商品には機能的な違いがあまりない。3つの価格で商品があれば、最安値を選ぶべきという指針である。これも一消費者としては参考になるかもしれない。
5.マーケットに勝とうとしない
ウォーレン・バフェットにせよ、エリック・シュミットにせよ、長期投資の重要性を大事にしており、(元手や情報量によるが)実際に市場平均に勝つことはなかなか難しい。
勿論、短期投資でも各種アノマリーや決算前、経済指標の発表前後など短期的にリターンをあげやすい機会もあり、そういう場合は筆者もトレードを行う。しかし、基本的には短期投資で勝つのは難しいことを理解すべき、というのが記事での指摘だ。
6.収入源を複数もつ
複数の収入源を持つことが多くの収入を生むのを助けるという指針である。日本に比べ米国は副業禁止規定が緩いケースが多く、実際に副業をしている人も多い。というのも米国では解雇規制も緩いので、特定の収入源に頼り切るのはリスクが大きい。
記事では簡単な例として以下の副業が挙げられている。
- 予備の車をライドシェアリングビジネスに利用
- フリーランスワーク
- 家庭教師
- 専門分野についての執筆
7.周りの人と張り合わない
Career Builderの2017年の報告によると、米国人労働者の78%が給料ぎりぎりの暮らし(live paycheck to paycheck)をしている。米国の政府機関が閉鎖された時に家賃や光熱費が払えないといったケースが大きく報道されたが、それだけ貯蓄をせずにぎりぎりまで消費している米国人がいかに多いかが分かる。
周りの人は最新のハイテクガジェットを持っているかもしれないが、そうした人に張り合って購入するのではなく、本当に必要か、収入に見合っているかなどを考える重要性が指摘されている。例えば、スマートスピーカーが大した事に使われていないことなども、その傾向の一つを示しているだろう。
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全部できても億万長者にはなれないけど
一見して分かる通り、日本人的にはあまりハードルが高いように見えない。これだけで良いなら今頃みな大金持ちである。
そういう話ではなく、こうした指針の存在自体が、金融危機を経ても多くの米国人の経済的な行動スタンスは何も変わっていないことの証左なのである。