コールセンターに電話をかけると「○○の方は1を、△△の方は2を……」と延々と続くシステムの正式名称が自動音声応答システム(IVR : Interactive Voice Response)である。
先日、VoIPなどビジネス向けクラウドコミュニケーションサービスを手掛けるVonage<NYSE: VG>が米国の16歳以上に対するIVRについての調査 Vonage 2019 IVR Studyの結果を公表した。
調査によると消費者の61%がIVRによって顧客体験を害すると感じ、優れた顧客体験をもたらすと回答したのはわずか13%、顧客体験に影響が無いと回答したのが21%であった。
顧客体験を損ねる理由として主に挙げられているのが、
- 選択肢に該当するものがない場合がある(65%)
- 無関係な選択肢を聞かなければならない(63%)
- 人に繋ぐのを阻害している(54%)
- 選択肢が長過ぎる(46%)
で、基本的にIVRが伴う煩雑なプロセスを不快に思う人が多いようだ。
更にレポートで強調されているのがIVRに伴う機会損失である。 2010年の調査からの追跡調査も行われた。
これによると、IVRにつながったことで少なくとも一度電話を切った人が85%おり、IVRであることを理由に通話全体の27%が切られていることが分かった。
そしてコールセンターによる電話から支出した金額の89%が、IVRを理由に競合他社に流れており、平均して顧客1人当たり年間262ドルを失っているということが分かっている。
勿論、IVRは適切にオペレータに繋ぐ上で重要であり、項目によって割り振ることによって全体的に待ち時間を減らすなどといった効果はある。それでも現状のIVRは冗長であることが多く、不快感を与えている傾向が認められる。
この結果は、2018年8月に米国の成人2,022人に行われたInteractionsとThe Harris Pollによるオンライン調査でも割合が違うものの、同様の傾向が出ている。但し、こちらの調査では、
- 質問の応対に効果的であれば、AIを活用した音声読み上げを選択する(63%)
- 人が介在していないことを快適と感じ得る(76%)
と人工知能による自動応答システムについての調査も行われている。結果的に人と繋がらないのが問題ではなく、迅速であれば良いという意味で両方の調査は整合的である。
参考文献[2]:ZDNet Japan「ほぼ全ての米国人が音声での顧客対応に不満をもった経験–AIの活用は条件次第」2019年2月24日