要約
- ウォルマートは広告ビジネスの推進を発表した
- ウォルマートは店舗客数が毎月3億人と非常に多く潜在性がある
- トレードマーケティングの主軸はAmazonであり、同じ分野で競争するのが狙い
ウォルマートはアマゾンとの戦いで広告ビジネスの後押しを目指しています(REUTERS, 2019/2/27)
- ウォルマートのサプライヤ(P&Gやユニリーバ等)を一つの社内広告チームとして扱うことでAmazonやGoogleなどのように広告事業での利益拡大を目指すと発表
- Amazonは検索結果の上位表示の広告料で利益を拡大(Q4の広告・その他売上は95%増の34億ドル)
- ウォルマートの店舗客は毎月3億人、オンライン購入が数百万人で、合計すればAmazonよりも買い物客は多い
- CPG(消費財)のトレードマーケティングはアマゾンに移行しており、米国のトレードマーケティングは年間1,780億ドルで、その大部分は米アマゾンの広告
- ウォルマートはオンライン・オフラインの購入データを利用して顧客に働きかける広告戦略を取る予定
解説
毎月3億人以上に訴求できる広告プラットフォームとしてウォルマートを見れば、まだまだ売上を伸ばせる可能性がある、というのが今回示された新しい方針である。
ウォルマートのチーフ・マーチャンダイジング・オフィサー(CMO)のスティーブ・ブラッツピーズ氏がロイターのインタビューに答えているような
- ウェブサイト上の単純なバナー広告
- 店頭のモニターでの広告
といった単純なものもあるが、主眼としてはAmazonが重視しているようなトレードマーケティングだという。
トレードマーケティングは、企業が消費者に対して直接行うようなブランドマーケティングではない。トレードマーケティングについて事例研究を行ったゲイリー・デービスの『トレード・マーケティング戦略』にあるように、
小売業者を流通チャネルの一構成員としてみるのではなく、顧客として考える
のが主眼であり、限られた商品棚「いかに店頭に置いてもらうか」を重視して店頭を起点にマーケティングを行うのである。デービスの議論で中心に据えられているのがプライベートブランドであり、
- 店頭のどこに置けば売れるのか
- 実際に店頭に来る買い物客はどのような購買行動を取るのか
- 各顧客の細かい属性に着目
などを重視する。
記事にもある通り最近はトレードマーケティングの対象は専らAmazonになっており、しかも1の「店頭のどこに置けば売れるのか」については「お金を出せば検索結果の上位に表示される」という単純なものに変わっている。
2と3についてはAmazonやGoogleの広告などユーザーの大規模データを利用した解析を利用できる。そして、1~3全てをウォルマートも実行できるだけの素地があるというのが今回の発表の妥当な解釈だろう。
参考文献
ゲイリー・デービス(1996) 『トレード・マーケティング戦略』同文舘出版
REUTERS, “Walmart seeks ad business boost in fight with Amazon”