筆者は原油価格戦争が長期化するという見方を示している一方で、今から買うなら金よりも原油だと主張している。これに一貫性が無いように伝わっているようなので補足する。
まず、基本的なスタンスとしては20~25ドルなど低い原油価格が場合によっては2年ほど続く可能性があると考えている。トランプ大統領が何かを発言すると跳ねるが、基本的には需要減、サウジアラビアやロシアの増産、更には貯蔵の問題など原油価格が上がる要因が無いので、ネガティブな事象が起こるとすぐに下がってしまう。こうした相場を利用して短期的な売り買いをする余地は大きい。
一方で、長期投資の観点で見た時、上値の余地と下値の余地を考えた時、金や金鉱株よりも原油や原油株の方が良いというのが筆者の考えである。
最近は少し流動性の問題が是正されて金価格が再び上昇してきており、金ETFの残高も増えてきた。しかし、よくよく考えれば金価格は今でも十分に高く、上値余地はそれほど大きくない。2011年の歴史的最高値1921.17ドルが頭にちらつき、シティなどは2,000ドルを超える予想をしているが、それとてそう簡単に到達する価格ではない。
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たとえ2,000ドルに到達したとしても現行の1,600ドル台から考えれば25%程度だ。採掘効率が悪いハーモニー・ゴールド・マイニング<NYSE:HMY>といったあまりにもボラティリティが高い銘柄もあるが、これはリスクも大きい。
一方で原油価格は20ドルを大きく下回る状態はサウジアラビアにとっても長く続けることは難しいし、シェールオイル企業を攻撃する上でも、そこまで低い必要は無い。また、20ドルを下回る状態が続くと米国が何らかのアクションを起こす可能性も高い。
一方で、(1)減産交渉が成立する、(2)シェールオイル企業が崩壊する、(3)経済状況が正常化する、といったことが起こり、何らかの形で原油価格戦争が終了すれば、途端に40ドル以上に跳ね上がることが予想される。これは金価格で想定される上値よりも上昇率が非常に大きい。
そう考えると、長期目線なら原油、或いは財務の健全性が高い原油株などの方が金よりも良いのではないかという話である。