原油価格戦争というチキンレースはどれだけ続くか

急反発した原油価格と今後の見通しを書いた後、WTI原油先物価格は一度28ドル台まで回復したが、その後再度大幅下落し、乱高下を繰り返しながら3月21日時点で23.4ドルである。原油戦争が長引けば基本的に20ドル台前半と非常に低い価格で低迷すると思われるが、米国政府の介入など「万が一何らかの減産合意」がなされれば一気に暴騰するリスクもあるので、一つのニュースで乱高下する相場となっている。

しかし、現時点で米国政府に動きがあると報道はされるものの具体的な成果は出ていない。テキサスでの減産も検討されているが、前回の記事でも指摘した通りSPR(戦略石油備蓄)で中心のサワー原油と、テキサスで主に産出されるスイート原油はブレンドに向かないので、その効果は割り引いて考えなければならない。

一方で、サウジアラビアやプーチン大統領の強硬の姿勢が報じられると再度暴落している。30ドルを下回る価格はサウジアラビア政府だけでなくロシア政府にとっても苦しいが、2036年まで続投が可能となったプーチン大統領は、求心力を見せつけるためにも 引くに引けない状況である。

Bloomberg「プーチン大統領、原油生産でサウジの「脅し」に屈しない-関係者」2020年3月21日

一連の状況から、財政赤字に見舞われる中でサウジアラビアとロシアのどちらが先に音を上げるかというチキンレースになっていると言える。では、そのチキンレースに勝つのはどちらで、どれくらい続くのか。

金融ジャーナリストであるサイモン・ワトキンス氏は、サウジアラビアよりロシアの方が原油安に長く耐えうると指摘する。ロシア金融ジャーナリストであるサイモン・ワトキンス氏は、サウジアラビアよりロシアの方が原油安に長く耐えうると主張している。財政均衡原油価格がロシアの方が低いことが理由で、予算と外貨準備の観点から1バレル25ドルでも10年間は耐えうる一方で、サウジアラビアは2年間しか保たないという。

OILPRICE.com, “The Inevitable Outcome Of The Oil Price War”, 19 Mar 2020

実際、ロシアの財政均衡原油価格は40ドル程度であるのに対し、サウジアラビアは80ドル程度である。30ドル未満の原油価格はどちらにとっても厳しいが、サウジアラビアの方が長期化すればダメージが大きいのは必然である。

しかし、逆に言えば2年間は原油価格戦争が続き得るとも言える。ブルームバーグは、過去3回の原油戦争を取り上げ、

  • 価格戦争1:1985年6月~(13ヶ月)
  • 価格戦争2:1997年11月~(17ヶ月)
  • 価格戦争3:2014年11月~(22ヶ月)

といずれも1年以上続き、記憶に新しい2014年からのものは2年近く続いたことを指摘する。今回の4回目の価格戦争では、これまでに無いスピードで下落しているので、当事者が交渉のテーブルにつくまでの時間はこれまでよりも短くなる可能性は指摘されているが、決して楽観視できるものではない。

2年を最長として、1年程度は原油価格が低迷することを覚悟する必要があると思われる。この時、まず20ドルは今後も意識される価格であろう。20ドルを下回るとサウジアラビアにとっても操業するメリットが無くなり、ここ数日の値動きを見ても20ドル未満は長く続いていない。次に25ドルはロシアの原油事業の損益分岐点であり、ここも強く意識される価格である。

また、上値については30ドルが重要だ。ロシア財政の想定原油価格は35~40ドルであり、30ドル程度であれば十分にロシアにダメージを与えられる。米国のシェールオイル企業においては言うまでもない。

よって減産交渉が進まない限り、最長2年間を目安として、20~30ドルで低迷する相場が続くと思われる。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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