どれくらいの割合の人が海外旅行に行ったことがあるのか:Well Traveled Survey

先日9月27日の「世界観光の日」に先立ってオンラインホテル予約サイトAgoda(アゴダ)が世界11ヶ国に対する旅行者についての調査Well Traveled Surveyを発表した。

調査はオーストラリア、中国、インドネシア、日本、サウジアラビア、マレーシア、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)、イギリス、アメリカ、ベトナムの11ヶ国で、18歳以上を対象に2019年6月に実施された。調査はアゴダの委託に基づいてYouGovが実施している。

サンプリングの方法やサンプル数が公表されていないが、恐らくアゴダ利用者に対するアンケート調査であると思われる。アゴダ自体はアジアを中心とした格安ホテルやゲストハウスを売りにしているので、後述するような結果のバイアスがあると思われる。

それでも「日本の若者の内向き」などが指摘される中、この調査結果を見ることは非常に興味深いので紹介していこう。

まず、以下は「何カ国を訪問したことがあるか」についての平均値である。英国の12ヶ国、オーストラリアの10ヶ国が飛び抜けている。

インド・中国・ベトナムはまだまだ海外旅行に行ける人が少なく、2ヶ国に留まっている。経済成長が進んできて海外旅行者が増えているタイやマレーシアは日本と同じ5ヶ国である。

全体的に数が多いように見えるのはアゴダの客層の傾向が現れていると考えられる。筆者も昔はアゴダをよく利用していたが、バックパッカーの利用者も非常に多いので、一部の人が平均値をお仕上げている可能性はある。

実際、タイでは飛行機に乗ったことが無い人が6割を占めるなど経済格差が大きく、平均値は大雑把な比較の意味しか持たない。

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そこで、一部の異常値を除いた「1~10ヶ国訪れたことがある人の割合」が下図である。異常に海外旅行に行く一部の人を除いて「一般的な海外旅行の経験率」を占めていると考えられるが、今度はまた傾向が大きく異なることが分かる。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦と中東の経験者が多く、上図で平均値が高かったイギリスとオーストラリアの割合は低い。アメリカも全体的に見て低い。

ここまでである程度予想がついたとおり「一部の人が非常に多くの国に旅行している」のである。以下が「31ヶ国以上を旅行したことがある人の割合」の上位で、

  1. イギリス:5%
  2. オーストラリア:4%
  3. タイ:3%
  4. アメリカ:2%

という結果であった。「1~10ヶ国訪れたことがある人の割合」が低かったイギリス・オーストラリア・アメリカおよび国内格差が激しいタイが上位に入っていることが分かる。

最後に「海外旅行経験が無い人の割合」についてのデータだ。凡例が隠れているので補足すると、

  • 青:旅行経験が無い人の割合(%)
  • 赤:旅行経験が無い18-24歳の割合(%)
  • 橙:旅行経験が無い25-34歳の割合(%)
  • 緑:旅行経験が無い人の割合(%)

である。

オーストラリアとイギリスは旅行経験が無い人も少なく、全体的に旅行好きな国民性があると言えるだろう。サウジアラビアの海外旅行経験率は非常に高く、若年層でも海外旅行経験がある人が殆どである。

赤(18-24歳)・橙(25-34歳)・緑(全体)を見比べれば分かるが、日本は若年層の時は経験が無い人の割合がインド並だが、その後経験率が大幅に上がることが分かる。一方で中産国のタイやマレーシアよりも海外旅行経験が少ないという意味では「内向き志向」というのも否めない。

それでも年齢を追うごとに海外旅行経験が増えていくというのは、受験勉強や就職といった環境要因が大きいかもしれない。

タイやベトナムも年齢が上がると海外旅行経験率が大幅に高まるが、これも環境や経済的な問題がある一方で、他でも指摘される東南アジア諸国の海外志向の高さも起因するだろう。

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真の意味で内向き志向と言えるのがアメリカかもしれない。年齢が上がっても海外旅行経験率が殆ど変わらない。所得などで海外に行けないという人も多いと思われるが、それだけではないだろう。

参考文献:agoda, “68% have visited up to 10 countries: Agoda.com study”, 26 Sep 2019

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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