ウィットウォーターズランド大学の自然地理学上級講師ジェニファー・フィケット氏が、The Conversationに季節学(生物季節学とも。Phenology:フェノロジー)の重要性について論じている。気候変動を追跡する上で重要なだけでなく、経済的にも用途があり、もっと多くの人が季節学を認識し、広い地域で記録されるべきだと主張している。
季節学とは、生物(動物や植物)の生態や行動によって毎年発生する季節的な周期を長期的に記録することである。植物であれば花の開花や果物の成熟、紅葉などが主である。動物であれば冬眠や渡り鳥の移動、繁殖期などがこれに該当する。
季節学の事例として代表的なのが表題にも示している「桜の開花記録」である。
日本に住んでいれば分かる通り、毎年基準となる木を各地で決め、その開花日を記録していくことで季節の移り変わりが分かるだけでなく、鹿児島の一部で桜が咲かなくなるという見通しがあるように、温暖化の長期的な影響も追跡できる。
フィケット氏によると、季節学で最も長期なのがこの桜開花記録であり、京都では9世紀から700年以上に渡って桜の開花が記録されている。桜の成長は2-3月の気温によって変動し、温度蓄積指数によって回帰予測できる。
これにより、長期的な気温を推定できるだけでなく、4回の寒冷期の発見(1330-1350、1520-1550、1670-1700、1825-1830)や太陽の周期性との関連やラグなども検出されている。
フィケット氏によると、他にも英国のマーシャム家による2世紀に渡る20種以上の動植物がもつ28の季節学的事象の観測記録により、気温や降水量データとの比較などにより将来の気候変動の予測性がみつかっている。
こうした例は他にもいくつもあるが、これらは気候変動など環境において役立つだけでなく、経済的な用途も多いという。
例えば南アフリカの南西ケープでは、リンゴとナシの開花時期の変化が、果実の収量や品質に重要な影響を及ぼしていると指摘される。他にも、開花時期などは観光による人の流れなどの予測にも使われているだろう。ブドウとワインなどでも同様の予測事例は多い。
フィケット氏は、個人が行うような日記や写真撮影などもビジネスなどへの応用ができると指摘しており、個々人が季節学について意識するだけでなく、科学者などはその応用についても考えるべきと主張している。
参考文献:The Conversation, “Explainer: why phenology is key in tracking climate change”, 24 Sep 2019