10月1日から中国は国慶節に伴う大型連休が始まり、国内外に多くの旅行客が旅立つわけだが、その目的地の一つに中国政府が押すレッドツーリズムがある。
レッドツーリズム(红色旅游)に関する定義は多くあるが、百武(2015)が中国政府や中国研究者の定義を整理した上で定義したものが非常に分かりやすい。
「レッドツーリズムとは、 中華人民共和国を成立させるために起こった革命に由来する地域を観光するものであり、そこでは革命精神を学び、中国式愛国主義教育を受けるものである
百武(2015: 207)
同じ百武(2015)によると、2004年に「2010年全国レッドツーリズム発展計画要綱」が制定されたことを受けて、中国で多くの関連施設の整備が進み、近年は急速に観光客が増加しているという。
上海の第一次全国代表大会旧跡記念館といった共産主義革命プロパガンダに役立つ代表的な観光地が代表的だが、辻田(2016)によると日中戦争の間に毛沢東が立てこもっていた陝西省延安などで地域振興や反日教育も兼ねた観光地も多いという。
最近は外国から中国のレッドツーリズムに参加する人も増え、逆に中国人が海外でレッドツーリズムを行うケースも増えているという。
前者に関しては外国人の目に触れることが増えたことにより、排外主義的な姿勢が緩和している傾向が見られるという。
後者の例としてはドイツのトリアにあるマルクスの生家があり、2015年には中国人客が10万人弱訪れ、中国人客が4割を占めている。(チャイナネット)
観光というエンターテイメントと結びつけることで愛国教育や反日教育を効果的に行い、かつ町おこしまでしてしまうというのは、日本人としては脅威だがその欲張りなアイデアは素直に面白い。
参考文献[1]:百武 仁志, レッドツーリズムとは何か, 日本国際観光学会論文集, 2015, 22 巻, p. 205-209, 公開日 2019/06/12
参考文献[2]:現代ビジネス「年間10億人動員!中国「レッドツーリズム」に参加してみた」2016年4月28日
参考文献[3]:チャイナネット「中国の「レッドツーリズム」、ブームを巻き起こす」2016年11月5日