9月4日にニューヨーク州サフォーク郡議会で満場一致で可決された郡法の改正案が9月27日に郡長スティーブ・ベロンによって調印された。
この法律は、意図的にヘリウムや空気より軽いガスで充填された風船を屋外に放出することを違法にするものである。元々2002年からサフォーク郡にあった郡法310条にあった「24時間以内に25個以上のヘリウムなど空気よりガスで充填された風船を屋外放出することを禁じる」法律を改正するものだ。
今後は時間的な規制を問わずヘリウム風船などを屋外放出できなくなる。(屋内放出は問題なく、またヘリウム飛行船などは対象外である。)
改正法はイーストハンプトンとサウスハンプトンに追随するもので、サラ・アンカー議員による立法である。元はイーストハンプトン町議員スーザン・マッグロー・ケバーが提唱していたものだ。
違反者に対する罰則は2002年法が踏襲され、一度目の違反は500ドルの罰金、2年以内に2回目の有罪判決を受ければ750ドルの罰金、5年以内に3回目以降の有罪判決で1,000ドルの罰金が科される。
法律の主眼は「環境保護」である。アメリカの海岸線から300マイル以内にある最も一般的な漂流物が風船であり、野生動物が誤飲することで危険というのはよく言われる話だ。
しかし、ヘリウム供給不足が深刻化して価格が上昇する中、風船で屋外放出してしまうと他の用途とは違ってヘリウムの回収が困難になるので、風船にはそもそも使うべきではないという産業界からの意見も強い。
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一方でヘリウム供給業者にとってはヘリウム価格が高いことは利益につながるので、反発する声も大きい。
郡・町レベルとは言え既に同様の法律が3例目であり今後同様の法律の可決がニューヨーク州を中心に拡がっていく可能性がある。他にもニュージャージー州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、アリゾナ州、ロードアイランド州、メイン州で同様の議論が進められている。
同様の法案が拡大していけばヘリウム市場に大きな影響を与えるだけでなく、米国でパーティーグッズなどの販売を手掛ける大手小売チェーンParty City<NYSE: PRTY>などの業績にも影響しそうである。
参考文献[2]:Riverhead LOCAL, “Suffolk lawmakers adopt ban on release of helium balloons”, 5 Sep 2019
参考文献[4]:Patch, “Intentional Balloon Release Ban Passes Unanimously In Legislature”, 4 Sep 2019