ジョージア大学の気象学者マーシャル・シェパード教授(元アメリカ気象学会会長)がフォーブスで、ヘリウム不足が天気予報を悪化させる可能性を指摘している。ヘリウム供給は今後緩和する可能性が高いと見られているが、依然として深刻な状況である。
シェパード氏が取り上げたのはアメリカ国立気象局ボストン事務局(NWS Boston)の以下のツイートである。
要するに、ヘリウム不足で気象観測用ゴム気球の打ち上げが1日1回に制限される見通しだという点である。(ツイートに出てくる12Zは協定世界時UTCからの時差であり、UTCと同じ意味)
通常、気象観測用ゴム気球にはラジオゾンデと呼ばれる装置を取り付けて飛ばされ、高層大気の温度、湿度、気圧、風などを収集している。気象衛星の情報だけでなく、三次元的な情報を収集することでコンピュータモデルの精度を高めている。少なくとも世界中の約900ヶ所から1日2回打ち上げられている。
気球自体は上昇し続けて最終的に気圧により膨張して破裂する。ラジオゾンデ自体はパラシュートで落下することが多く、回収された場合修理されるケースもある。しかし、ヘリウム自体は空気より軽いため回収されない。ヘリウム自体は水素の次に多い原子であるにも関わらず、ヘリウム風船を規制する動きが米国で高まっている理由の一つがこれだ。
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シェパード氏は、現状では気球の打ち上げの多くが中断されるといった差し迫った脅威は無いとしつつも、こうした気球からの情報が損なわれることでモデルに小さくない影響を与える可能性があると指摘している。
また、水素バルーンなどの代替品もあるとしているが、現時点ではヘリウムが主体であり、実際に打ち上げが制限されることになれば天気予報の精度が悪化する可能性があることに注意だ。
参考文献:Forbes, “Could A Helium Shortage Degrade Weather Forecasts?”, 20 Jan 2020