南部アフリカ諸国(南アフリカではない)のマラウイ、モザンビーク、タンザニア、ザンビア、ジンバブエの5ヶ国は「T5」と呼ばれるタバコ産業が盛んな国々である。最近この5ヶ国がマラウイの首都リロングウェで世界的に広がる反タバコのロビー活動に対処するための議論を行った。
健康に対する世界的な意識の高まりによってタバコ産業への圧力は強く、タバコ税を上げたり、タバコ・プレーン・パッケージを導入したりといった取組みを行う国が増えてきている。
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国内でのタバコへの規制だけでなく、葉たばこの生産国に対するロビー活動も活発である。T5はタバコだけでなく、南アフリカと同様に金も重要な産業であるが、反タバコのロビー活動の一貫として重要な輸出収入源である金箔に重い関税を課している国が増えている。
行われた会合は、これに対抗するための議論である。具体的な方策については公表されていないが、国内では国民に対して喫煙もタバコ栽培も強要しているわけではなく、確かな情報共有に基づいた行動計画の必要性があるという結論が出された。
問題を複雑にしているのは、ESG投資などの広がりもあって、タバコが健康を害するとして規制する国が増えている一方で、こうした国では重要な産業であり農家にとって生活に必要な仕事であり利害が衝突しているからである。
更に言えば、T5の葉たばこの主要な輸出先が中国である。2017年時点で世界の葉たばこの1/3を生産し、タバコ産業も活発な中国の需要を支える上でこれらの国の葉たばこは重要で、寧ろタバコ生産は増加する傾向にある。
例えばジンバブエは干ばつに見舞われたにも関わらず過去最高のタバコ生産量258万トンを記録した。マラウイのバーリー葉は世界のタバコ輸出の6.6%を占め、タバコはマラウイの輸出額の53%を占める。
つまり、
- 世界的なタバコ規制の流れ
- ロビー活動によるタバコと金箔産業への影響
- T5の農家の生活
- 世界的な中国への反発
が絡み合った複雑な事象であると言えるわけだ。
参考文献[1]:The Herald, “Southern African countries battle to save own tobacco industry”, 28 Sep 2019
参考文献[2]:statista, “Leading tobacco producing countries worldwide in 2017 (in 1,000 metric tons)*”