ウガンダで未知のバナナ病が急拡大

バナナの病気と言えばTR4(トロピカルレース4)型パナマ病(新パナマ病)が有名だ。バナナの栽培は挿し木などで行われるので遺伝的にクローンであり、同じ病気が拡大すれば供給に大きな問題が出る可能性がある。「将来的にバナナが消える」と言われることがあるのは、これが所以である。しかし、アフリカ中部のウガンダでは、これとは別に新たなバナナ病が拡大しているようだ。

キャベンディッシュと新パナマ病

新パナマ病の被害が出ているのはキャベンディッシュと呼ばれる品種で1985-2000年のFAO統計では全世界のバナナ生産に占めるキャベンディッシュのシェアは47%である。

アジアで猛威を奮った新パナマ病は2019年に中南米に進出し、コロンビアでは非常事態宣言も出された。以下の地図はバナナ生産国と新パナマ病の発生国が示されている。アフリカでも広くバナナが生産されており、モザンビークでも新パナマ病が確認されているが、今の所アフリカでは新パナマ病の影響は限定的である。

バナナ生産国と新パナマ病の発生国
出典:natureダイジェスト「新パナマ病がついに中南米に上陸」

ウガンダの未知のバナナ病

しかし、ウガンダ(アフリカ中部)で発生しているバナナの病気はこれとは別であり、そもそも品種も異なる。

以下の地図は、国別にバナナの生産量と品種別シェアが示されている。黄色がキャベンディッシュ、赤色がその他の生食用品種、緑色と青色がプランテンと呼ばれる調理用バナナ品種である。

国別バナナ生産量と品種
出典:ProMusa, “The hidden side of banana diversity”

プランテンは東南アジア原産でアフリカに伝えられ多く生産されている。食感がイモに近いので赤道直下の国では主食として食べられている事も多く、通常の意味でのバナナとは区別される。

アフリカ中部ではプランテン種が多く栽培されており、ウガンダで急速に広がっているのが未知のバナナ病である。

未知のバナナ病にかかったバナナは急速に果実を茶色く乾燥させる。少なくとも3地区6郡のプランテーションに拡大しており、多くの農家が政府にバナナ病の封じ込めを求めている。今の所、政府に病気にかかったバナナのサンプルが送られているが特にアクションが取られていないことが問題視されており、バナナ農園は病気にかかったバナナを切り倒して埋める事しか策が無い状況である

Daily Monitor, “Deadly banana disease: Locals call for government intervention”, 22 Feb 2020

我々が食べるバナナ品種はキャベンディッシュが主であり、バナナ生産が多い上位5ヶ国(インド、エクアドル、ブラジル、中国、フィリピン)共にキャベンディッシュを主に生産している。その意味では「対岸の火事」であるが、アフリカ中部を中心に広くプランテン種バナナに病気が拡大していけば、ワタリバッタの大量発生と共にアフリカの食糧供給に悪影響を与える可能性がある。

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