商業用不動産サービスを手掛けるCBREのベトナム法人が発表したレポートでは、新型コロナウイルスの早期封じ込めに成功したベトナムのホテル業界の強気な見方が示された。
下図のように、新型コロナウイルスの影響で、2020年第1四半期はホーチミンもハノイもRevPAR(販売可能客室当たり売上)は大幅に低下し、その背景には外国人観光客の大幅な低下が関連している。
ベトナムにおいて外国人観光客の影響をもろに受けやすいのは四つ星ホテルや五つ星ホテルといった高級ホテルであり、新型コロナウイルスの影響が2020年6月までのケース(Case 1)、9月までのケース(Case 2)のいずれの予測においても、高級ホテルのADR(平均客室単価)やRevPAR、稼働率(Occupancy)も大幅に低下すると予想されている。
それでも第2四半期の外国人訪問者数が前年比99%を記録という中での予想としては楽観的に見える。これはベトナム政府が観光業の復活を経済政策の主軸に構えるというところから来ている。また、CBREは長期的な見通しは非常に楽観的である。
また、今のところ四つ星・五つ星ホテルへの投資への目立った焦げ付きは発生しておらず、2020年全体で見れば客室数は増加する見込みである。
ベトナムの観光業の長期的な見通しが有望なのは筆者も散々当サイトで指摘していることではあるが、四つ星・五つ星ホテルの動向については少し注意が必要であると考えている。
例えばハノイやホーチミンではないが、リゾート開発が今最も盛んなダナンは、基本的に三つ星以下のホテルやヴィラなどが多く、高級ホテルの客室数は少ない。しかも2019年夏の時点で供給過剰が指摘されていた。
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これは外国人観光客が増えつつも客単価がそれほど上がらないというのがポイントである。例えば前掲の図2では、コロナ以前でもADR(平均客室単価)は100~110ドル程度/室であり、先進国からの観光客の基準で考えれば、部屋のランクの割に安いだろう。また、図3のハノイの四つ星・五つ星ホテルの客室数は8000弱しか無いわけである。
寧ろ外国人向けの高級路線の旅行需要というのは未だ掘り起こされていない状況であり、単純に「パンデミック後の回復が早い」という見方にはならないのではないか。
参考文献:STR, Vietnam National Administration on Tourism, CBRE Research, Q1 2020.