前回に続いて、世界経済フォーラム(WEF)のレポート “ASEAN Youth Technology, Skills and the Future of Work”について、筆者が気になった部分をピックアップしていく。
前回:世界経済フォーラム「ASEANユース」レポート(1):スキルアップの場所と姿勢
海外志向
以下は、「現在どこで働いているか」(水色)と「将来どこで働きたいか」(青色)に対する回答である。
現時点で最も多いのは個人事業・起業家(Myself)であり、ついで中小企業(SME)である。将来的な希望で言えば、中小企業が大幅に下がり、外資系多国籍企業(Foreign multinationak company)がその分に入るという形になっている。
もっとも、これだけでは海外志向が高いとは言えない。国内で外資系企業で働きたいだけかもしれない。
そこで下図は「3年以内に海外で働きたいか」という質問に対する国別の回答結果である。凡例は、
- 青色:自国で働きたい
- 橙色:他のASEAN諸国で働きたい
- 水色:ASEAN以外の国で働きたい
である。
ASEAN平均では、24.7%が自国以外のASEAN諸国、46.4%がASEAN以外の外国で働きたいという結果となっており、合わせて71.1%が海外で働きたいという非常に強い海外志向であることが分かる。
スキルギャップ
次の図が面白い。これは「スキルの重要性についての認識」(横軸)と「そのスキルの自身の熟練度」(縦軸)をプロットしたものだ。横軸なら右ほど重要なスキルと考えられており、縦軸なら上ほど熟練度が高いと考えられられているスキルだ。
つまり、
- 第一象限(重要性が高い & 熟練度が高い)
- 第二象限(重要性が低い & 熟練度が高い)
- 第三象限(重要性が低い & 熟練度が低い)
- 第四象限(重要性が高い & 熟練度が低い)
である。
若者だけあって、ソーシャルメディアなど「テクノロジー利用」(Technology use)は重要性も熟練度も高い認識があるようだ。
「分析・批判的思考」(Analitical and critical thinking)や「数学・科学」(Maths and science)、「データ分析」(Data analytics)があそれほど重要と認識されていないのは、労働者の多くはまだまだ労働集約型産業に従事しているからであろう。
プログラミングなどの「テクノロジーデザイン」(Technology design)が最も熟練度が低いと感じている労働者が多いようだ。重要性が中程度なのは、これも従事する産業の影響を受けているだろう。
「重要かつ熟練度が低い」と認識されているのがやはり言語(Language skills)となっている。3年以内に他国で働きたいという人が7割というのであれば、英語の習得が必須であり、当然の結果と言えよう。
参考文献:WEF, “ASEAN Youth Technology, Skills and the Future of Work”, 16 Aug 2019
前回:世界経済フォーラム「ASEANユース」レポート(1):スキルアップの場所と姿勢