人口を維持するには2.1以上の合計特殊出生率が必要である。日本(1.43)は言うまでもなく、つい先日まで一人っ子政策を行っていた中国(1.63)や世界一合計特殊出生率が低い韓国(1.05)など東アジアの少子化問題は深刻である。(データの出典は世界銀行,2017)
しかし、これは経済成長著しいASEANでも同じ問題である。1970年に5.5あったASEANの合計特殊出生率も、2017年には2.11まで低下している。既に人口維持にギリギリの水準である。
2.1をわずかに超えているのも、人口が多く経済効果が著しいインドネシア(2.34)やフィリピン(2.89)が存在するからであり、
- マレーシア:2.02
- ベトナム:1.95
- タイ:1.47
- シンガポール:1.16
と、日本より一人当たりGDPが高いシンガポールは置いておいても、マレーシア、ベトナム、タイとASEANでも重要な開発途上国も少子化は問題である。
世界的にも合計特殊出生率は減少し続けており、今や世界平均で2.426である。
合計特殊出生率の低下に対して安易に移民を主張する人は多いが、これは場当たり的な対策であり、本質的な解決にはならない。
世界的に合計特殊出生率が減少し、今後30年で世界人口は減少に転じるとも言われている。世界の合計特殊出生率が2.1を切った時、一体どこから人間を調達するというのだろうか。世界人口が減少に転じるときの世界人口は100億人を超えていると思うが、その多さに慢心して、絶滅への道を甘んじて受け入れるのだろうか。
経済成長と共に合計特殊出生率が低下してくるのは、経済の高度化に伴い、必要となる教育の普及が進むからである。子どもが安価な労働力として利用できなくなり、教育のコストも高くなるからだ。
特に合計特殊出生率の低下効果が高いのは女子教育の普及である。ポリコレに汚染されたマスコミは指摘しないが、国連が後発発展途上国での女子教育の普及を進めているのは、男女に機会の平等を与えることは当然あるが、それ以上に「合計特殊出生率を下げる」のが目的である。(筆者が女子教育に反対しているわけではないので悪しからず。)
一部の国では人口増加が大きな問題であるが、多くの国では今後人口減少が問題となる。多くの投資家にとっては自分が生きている間のことしか考えないが、先のASEAN諸国で見たように、人口減少問題は東アジアに限らないので、投資家的な観点でもよく考えなければならないだろう。
参考文献:The Asean Post, “No more babies for ASEAN?”, 15 Aug 2019