アジア開発銀行による2020年の経済成長見通しの下方修正

アジア開発銀行(ADB)がアジア太平洋地域の新興国経済成長見通しの最新版を発表した。2019年は米中貿易戦争の影響などを受けて成長率を落とすこととなった。2020年も全体の見通しは今年と同じくらいだが、全体的に下方修正され、かつ、地域によって明暗が分かれる予想となった。

以下は地域別に経済成長率の実績(2014-2018年)と予測値(2019-2020年)を示している。予測値については前回予測と今回予測を並べている。アジア開発途上国全体で0.2%、NIEs*1を除くと0.3%下方修正されている。

アジア開発銀行(ADB)による経済成長見通し(単位:%)
出典:ADB, Asian Development Outlook 2019 Supplement

また、全体としては今年と同程度の成長率予想となっているが、南アジアと東南アジアが成長率を上げる予想となっているのに対し、中央アジアや東アジアは微減、太平洋地域は大幅減の予想となっている。

南アジアの成長率回復を牽引するのはインド(5.1%→6.5%)やスリランカ(2.6%→3.5%)である。但しインドは当初の予想(6.5%→7.2%)から引き下げられた結果でもあるので注意が必要だ。同じ南アジアでもネパール(7.1%→6.3%)やパキスタン(3.3%→2.8%)など下落を示す国もある。

東南アジアについては2020年の成長率予想に下方修正は無いが、2019年の予想が引き下げられた。個別で見れば、マレーシア(4.5%→4.7%)、シンガポール(0.6%→1.2%)、タイ(2.6%→3.0%)と成長率が回復する予想だ。米中貿易戦争の恩恵を受けて好調だったベトナムは逆に予測が上方修正されているが、来年の成長率予測は鈍化している。

アジア開発銀行(ADB)による東南アジアの経済成長見通し(単位:%)
出典:ADB, Asian Development Outlook 2019 Supplement

*1:最近はNICS(新興工業国)の方がよく使われるので、NIEs(新興工業経済地域)という言葉を久しぶりに聞いた人が多いかもしれない。ここでのNIEsは香港、中国、韓国、シンガポール、台湾を指している。

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