東南アジアの干ばつに伴う電力への影響

東南アジアで深刻な干ばつは改善の余地が見られない。12月上旬にはASEAN会議で、2020年11月のASEANベトナムサミットで干ばつについての宣言を採択する方針が決められた。タイでは11州でダムの水量が30%未満に落ちたことで干ばつの非常事態宣言がされた。ベトナムも通常は雨期でダムの水量が満杯になる時期であるにも関わらず、主要なダムの水位は65~85%と低い状態である。

しかし、同じ水不足でもタイとベトナムでは影響が大きく異なる。タイでは化石燃料による発電が90%で水力発電は7%に過ぎないが、ベトナムでは化石燃料49%に対し水力発電が51%と全体の半分を占める。

アジア太平洋地域の干ばつによる経済的損失は年間6,750億ドルで、東南アジアはその災害リスクを更に上回り、GDPの3%に達する。そのうち60%は農業への影響であるが、40%はそれ以外ということであり、停電などが頻発するようになれば製造業などにも影響が出てくると予想される。

例えばベトナムのバン川水力発電プロジェクトでは、4.23億立方メートルの容量があるにも関わらず、現在は1億立方メートルほどしかなく、今年の発電量は昨年の2/3にとどまる。

ベトナムは先日のグローバル気候リスク指数2020でも、1998-2018年のリスク指数で全体6位となったが、これは台風や熱波による直接的影響であり、干ばつに伴う間接的影響などは含まれていない。安定した経済成長には電力供給の多様化などが必要となる。

関連記事:グローバル気候リスク指数2020で日本が1位に

急速な経済成長の過程で電力不足が懸念される中、ベトナムは2020年からラオスからの電力輸入量200MW増やし1,200MWにする計画だが、ラオスは98%が水力発電であり、こちらも災害リスクに対して脆弱である。

参考文献[1]:Eleven, “ASEAN to take immediate steps to combat drought in SE Asia”, 11 Dec 2019

参考文献[2]:Bangkok Post, “Drought declared across 11 provinces”, 18 Dec 2019

参考文献[3]:VN Express, “Hydropower dams run out of water on lack of rain, heatwave”, 22 Dec 2019

参考文献[4]:新エネルギー財団「東南アジアの再生可能エネルギー情報」2018年3月31日(PDF)

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