メコン川をめぐる一帯一路と干ばつ問題

メコンデルタと言えばメコン川下流に位置するベトナム南部の三角州であり、稲作が盛んな地域である。しかし、以下のメコン川流域図を見ても分かる通り、メコン川というのは中国が源流で、ベトナムに至るまでにミャンマー、ラオス、タイ、カンボジアを通る。こうした状況下で、中国の一帯一路や昨年から続く干ばつにより関係国で揉めているというのが本稿の内容である。

メコン川は4,000km以上の長さで流域面積は80万平方メートルにも達する東南アジア最長の河川であるが船舶運航には向かない。雨季は水流が速すぎて、乾季は浅瀬が多過ぎるからだ。

それでも中国から東南アジアの交通と貿易をより円滑化するためにはメコン川のコントロールが必要となる。その為に中国が進めてきたのが「ダムの建設」と「急流の原因となる川底の爆破」である。

後者の爆破工事は2000年から進められてきたが、地域住民や環境保護活動家などの反対が強かった。それでも無理に進めてきた側面はあるが、2月初旬にはプロジェクトが停止された。干ばつにより100年来の水位低下により、下流の魚種が壊滅的な被害を受けたからだ。

そもそもメコン川流域開発は、中国主導のランカン・メコン協力(LMC)で行われており、マラッカ海峡依存の貿易ルートからの脱却が目的となっている。

先日の第5回LMC外相会議でも、タイやベトナムを中心にメコン川の開発に伴う干ばつや生態系への影響などが議論された。メコン川開発ではダムと合わせて水力発電所が建設されるケースも多いが、雨量の少なさだけでなく、ダム自体が干ばつに影響しているのではないかと反発が大きい。

ダムの建設に積極的なのがラオスで、過去4ヶ月の間に下流に2つのダムを建設しており、全部で72のダム建設を計画している。その工事には中国企業が強く関わっており、いわゆる一帯一路の一貫である。

中国は干ばつの原因は気候の問題でありダムのせいではないと否定しているが、ベトナムなどは更なる放流を求めている。

確かにダムに貯水していても、定期的に放流しなければ溢れてしまうし、水量が減れば海水が流れ込んで水質が塩化するなど悪影響も大きい。中国はLMC会議を受けて放流量を毎秒850立方メートルまで増加したが、カントー大学気候変動研究所Le Anh Tuan所長はそれでも少なすぎると指摘する。

その理由としては、

  • メコンデルタに達するまでにタイとラオスで消費されてしまう
  • 2016年の深刻な干ばつの時は毎秒2,100立方メートルが放流されたがメコンデルタまで届かなかった

としており、毎秒2,500立方メートルの放流が必要としている。

しかし、必要なレベルで放流すると流域が洪水に見舞われる危険性も高く、問題の解決は非常に難しい。また、もし必要な量を放流したとしても、メコンデルタに届くまでに3~4週間はかかるといい、稲作への深刻な影響は免れないようだ。

参考文献[1]:Reuters, “China says will help manage Mekong as report warns of dam danger”, 20 Feb 2020
参考文献[2]:South China Morning Post, “Thailand nixed China’s Mekong River blasting project. Will others push back?”, 22 Feb 2020
参考文献[3]:VN Express, “Experts say water release from Chinese dams too little to reach Vietnam”, 25 Feb 2020
参考文献[4]:Bangkok Post, “Northeastern folk voice fears over new Mekong dam”, 26 Feb 2020

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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