世界経済フォーラム「ASEANユース」レポート(1):スキルアップの場所と姿勢

16日、世界経済フォーラム(WEF)がASEAN6ヶ国の若年層15-35歳56,000人を対象に行われた仕事やスキルについての調査レポート”ASEAN Youth Technology, Skills and the Future of Work”が発表された。

広範な調査データが公表されているが、筆者が気になった部分をピックアップして紹介していこう。

生涯学習への意欲の高さ

以下は、「労働市場に対し、現在の自身の教育・スキルレベルをどう評価するか」という質問に対する回答である。凡例は上から、

  • 青:生涯の大部分に渡って通用する
  • 濃紺:10年くらいは通用する
  • 橙:5年くらいは通用する
  • 薄水色:継続的なアップデートが必要である
  • 水色:時代遅れである

を表す。

労働市場に対し、現在の自身の教育・スキルレベルをどう評価するか
出典:WEF(2019), Chart 1

全体的に継続的に学習の必要があるという回答が多く、ASEAN平均で52.4%が「継続的なアップデートが必要」と回答している。特にベトナムはこの傾向が顕著で、69.3%がこの回答を選択している。

レポートでは” ASEAN youths show a strong commitment to lifelong learning and a growth mindset”(ASEANの若者は、生涯学習と成長志向に強くコミットする)というポジティブな節タイトルをつけているが、必ずしもそうとも言えない気がする。

学校教育を終えてもスキルアップに意欲を持つことはたしかに好ましいが、ベトナムの例を見れば、経済成長や技術革新に労働者のスキルが追いついていないという側面もあり、労働者の熟練度が足りないからこその回答とも言える。

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現場力をどこで身に付けたか

下図は、「自身の現場力(workspace skills)をどこで身に付けたか」に対する回答(ASEAN全体)である。水色が全回答者で、青色が企業労働者(事業主と未就業を除く)の回答である。

自身の現場力(workspace skills)をどこで身に付けたか
出典:WEF(2019), Chart 3

学校(School)や大学での学部教育(Undergradate university)が多いのは勿論だが、レポートでは企業労働者はOJT(On-the-job training)の割合が多いことに着目している。当然と言えば当然だが、やはり日本と雇用慣行が全く異なるので、OJTでスキルを習得する割合は全体的に見れば低いように思える。

寧ろ多いのは学校外(Outside of school)という回答で、全体で20%ほどが選択している。そういう意味では前節の「生涯学習の意欲の高さ」とも一致するように思える。

参考文献:WEF, “ASEAN Youth Technology, Skills and the Future of Work”, 16 Aug 2019

次回:世界経済フォーラム「ASEANユース」レポート(2):海外志向とスキルギャップ

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