日本ではオリンピックが開催される2020年以降に起こる様々な問題(不動産需要の揺り戻しなど)の通称「2020年問題」の一翼として高度IT人材の不足が主張される。しかしIT人材に関しては日本特有のものではなく、世界中で不足しているものである。
そんな中、ベトナムのIT教育事情について、短いが興味深い記事が出ていた。
2020年までにベトナムは40万人のIT人材が不足(Vietnam net)
- 4月6日にハノイでICTの人的資源に関するフォーラムが開催され、40万人のIT人材不足について話し合われた
- ベトナムの大学の37.5%がICT専攻科目を提供し、毎年5万人のIT人材が供給されている
- しかし、IT業界の求人は年間3万人ずつ増えており、2020年には100万人の求人募集がされ、40万人の人材が不足すると見積もられる
- HCM City Computer Associationの副会長Phi Anh Tuan氏は、「国内のIT教育プログラムは、高度エンジニアの需要を満たしていない」「要求を満たすエンジニアは27%だけで、残りは3ヶ月間の追加のトレーニングを受ける必要がある」と指摘
補足
ベトナムは雇用の流動性が高いだけあって、新卒に求めるスキルが高い事が伺える記事である。「IT教育プログラムの卒業生の27%しか高度IT人材の需要を満たせていない」と否定的な論調で書かれているが、日本人的な感覚からすれば、大学でIT教育を受けた人の3割近くがそのまま高度人材として通用するのは驚きである。
最近は様々なIT教育プログラムに関与しているが、そこまでの成果が出るようなプログラムなら非常に興味がある。無論、「ベトナムで求められる高度IT人材の質がそこまで高くない」といった可能性はある。
また、関連してインドではよくエンジニアの質の低さが指摘される。
これに関しても、関連記事では「教育の質の面」が指摘されているが、単に求める質が高すぎるだけかもしれない。
米国などとの比較調査により、確かに先進国に比べればインドのエンジニアの平均的な質は低いことは指摘されているが、雇用者のニーズとマッチするかは、相対的な期待の強さにも関連する。IT人材の需要が多い国ほど「ITにそこまで適さない人材もIT市場に供給される」と考えられ、平均的な質が下がるのは当然だからだ。
このように、日本などとの比較で様々な可能性を検討でき、非常に示唆的であった。
参考文献
Vietnam net, ” Vietnam to lack 400,000 IT workers by 2020″, 8 Apr 2019