以前、マレーシアで生産されるドリアンの中国向け輸出が活況である一方で、新たな環境問題リスクでもあるという指摘をした。
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マレーシア以上に中国にドリアンを輸出しているのがタイで、生産量のうち7割が中国に輸出されるなど明らかにバブル状態となっている。
中国のドリアン愛はいかにしてタイの田舎を変えているか(Channel NewsAsia)
- 中国ではドリアンケーキなど臭いを抑えたドリアン製品が消費の増加を牽引
- 2009~2017年の間に同国のドリアン輸入額は1.24億ドルから5.52億ドルに増加、2018年は更に11億ドルと倍増
- タイは2003年の貿易協定により生のドリアンを中国本土に直接輸出できる唯一の国
- 2018年は年間生産量約60万トンのうち70%が中国に輸出された
- タイのドリアン主要産地は国土の1.2%に過ぎない東部チャンタブリで、生産量の半分
- 同省で取引をした中国のバイヤーは2017年の約100社から2018年は500社に急増
- ゴム価格の低下により、ゴムの木が次々とドリアンの木に置き換えられている
- ドリアンの生育には時間がかかるが現地では楽観的
- 臭いの少ない冷凍ドリアンが人気の爆発を支え、マレーシアがライバル
補足
ドリアンケーキやドリアンタルトといったお菓子だけでなく、ドリアンチキンポットやドリアンチャーハンなど何でもかんでもドリアンを入れるのが中国の中流階級での流行りである。
ドリアンが「果物の王様」と言われる所以はその旨味であり中国でも爆発的に人気が出ているが、その臭いに抵抗が強い人は多い。そこで料理やお菓子に入れてしまうことで臭いを抑えるという形で市場が拡大している。
それまでタイは「生のドリアンを中国本土に直接輸出できる唯一の国」であったが、2018年に市場を倍増させたのは臭いが少ない冷凍ドリアンである。
対抗馬となるのが2019年から冷凍ドリアンのみ輸出が許可されたマレーシアであり、マレーシアの状況については冒頭の記事で指摘済みである。
問題は、ドリアンバブルということを背景に、ゴムの木をドリアンの木に変える農園がどんどん増加していることである。これはマレーシアにおいてアブラヤシの木をドリアンの木に植え替えていることと似た状況にある。これはドリアンに限らずベトナムにおけるコーヒーなど、特定の作物の人気で一気に生産がシフトしてしまうことはよくある。
生産量の7割が特定の国への輸出といった歪な市場が長く続くわけはなく、将来的なドリアンバブルの崩壊だけでなく、アブラヤシ(パーム油)や天然ゴムなどの供給にも影響を与える可能性がある。
参考文献
Channel NewsAsia, “How China’s love of durian is reshaping the Thai countryside”, 30 Nov 2019