ここ2~3年、中国でドリアン人気が高まり、タイやマレーシアのドリアンが高騰していた。タイでは生産量の7割が中国に輸出されるなど歪な市場となり、マレーシアでは新たな熱帯雨林破壊リスクも生じていた。
しかし、新型コロナウイルスの流行により中国からの需要が激減しており、マレーシアのジョホール州では少なくともドリアン価格が2週間で50%以上下落している。中国で封鎖されている都市が増えていることにより、通関・物流の問題で出荷が殆ど停止されている。
中国がマレーシアからの冷凍ドリアン輸入を許可したのは2019年5月からで、マレーシアの輸出向けドリアンは総生産量の6.8%に留まるが、高級品種ムサン・キングを中心に中国で高まるドリアンブームからの反動は大きい。また、ドリアン農園への観光も大きく減少している。
一方で果物農家協会のメリッサ・ヤップ会長は、ドリアンの旬は4~8月であり、液体窒素冷凍庫ではドリアンを最長2年間保存できるため、今後新型コロナウイルスの蔓延が沈静化していけば中国の需要は回復する、と楽観的である。
マレーシアに関しては冷凍ドリアン輸出だけが可能なので影響は限定的だが、生産量の7割が中国向けとなっており、生のドリアンも輸出可能なタイにおいては影響は甚大である。日経アジアンレビューによれば、例年2月下旬頃から100万トン近くのドリアンが市場に出されるが、今年は中国からのバイヤーがいないという。
Thai Fresh Fruit Traders and Exporters Associationによれば、2019年の最高値180バーツ/kgから今年は50バーツ/kgにまで下がる可能性があるという。
タイ、ベトナム、ミャンマーは特に農作物全体の輸出に影響があると考えられており、タイとベトナムは農業生産の1/4を、ミャンマーは半数以上を中国に輸出しており、この3ヶ国で中国の農作物輸出の半数を占める。
日本なども中国からの農作物が入ってきていないことで野菜価格などの高騰に繋がるのではないかと指摘されているが、これは中国や東南アジアの需給問題など幅広く影響が出ているということが分かる。