英国のスーパーマーケットチェーン最大手テスコ<LSE:TSCO>が、タイ法人とマレーシア法人を売却する可能性を示した。
テスコは1998年にアジア通貨危機を機にタイに進出し、テスコ・ロータスとして1,967店舗を展開している。マレーシアも2002年に進出して74店舗ある。
ダウ・ジョーンズはアジア事業の価値が最大90億ドル(タイ事業だけで70億ドル近く)であると評価したことで月曜日のテスコ株は一時6%上昇した。
同社は現時点で売却検討は初期段階であり、売却が完了する保証はなく、必要に応じて新たに発表を行うとしている。
同社は8月に従業員4,500人規模のリストラを発表したばかりで、ブレグジットの影響への対策、オンラインショッピングへの移行など改革の途中である。
歴史的にはテスコは海外進出はうまくいっておらず、嘗て日本にも進出していたが最終的に日本法人はイオンに売却する形で撤退している。
タイとマレーシアは数少ないうまくいった海外事業で、10月の中間決算では両国で34億ドルの売上高、営業利益は54.1%増の2.2億ドルであった。(チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキアなど中欧事業は赤字である。)
タイ法人では引き続き急速な拡大を目標としており、3年以内に750の小型店舗の建設を目標としている。
大型店舗ではなく小型店舗であるエクスプレスを拡大するというのは、タイで競合するBig C(ビッグC)と似た戦略である。
高く売れる時に売却する方針であると言えるが、同時に不採算部門の合理化なども進めていく必要があると思われる。またCEO後任のケン・マーフィーは中国進出に力を入れており、現時点で合弁事業として進出している中国やインドへの展開を更に強化していく可能性がある。
参考文献[1]:CITY A.M., “Tesco mulls sale of Thailand and Malaysia operations”, 8 Dec 2019
参考文献[2]:Bangkok Post, “Tesco may sell Thailand, Malaysia businesses”, 9 Dec 2019
2020年1月17日追記:バンコクポストなどによると、Big CのCEOであるAswin Techajareonvikul氏は、同社がテスコのアジア事業に対する入札の意思を示した。上記で示している通り、両者ともに小型店舗の拡大に積極的であるが、Big Cは60県で展開しているのに対し、テスコは一部の州に特化しており、ビジネスモデルが異なるため小売事業の強化に繋がるという見方を示している。
2020年3月10日追記:最終的にはBig CではなくCPグループ傘下のCPオールが1兆円でテスコのアジア事業を買収した。食品大手財閥であるCPは、セブンイレブンのタイ法人など流通にも力を入れており、シナジー効果を期待していると考えられる。