クラウド会計ソフトfreeeのフリー(株)が12月17日に上場する。
フリー(株)が提供するfreeeは機能の充実とともに価格が非常に安いという圧倒的なコストパフォーマンスを売りにしており、中小企業や個人事業主をターゲットにここ数年顧客を獲得し急速にシェアを拡大している。
今回はフリー(株)の今後の成長性をマーケティングを通して予想していきたいと思う。
まず確認していただきたいのが、新規上場申請のための有価証券報告書である。
抜粋した以下の図を確認すると、ここ数年間赤字を垂れ流している状態にあることが分かる。
また、別のページにおいては各国におけるクラウド普及率を示す図が掲載されており、日本がクラウド業界にとってのブルーオーシャンであると考えていることが窺える。
これらからfreeeのマーケティング戦略を推測すると、低価格による加入しやすさを売りにして、圧倒的なシェアを取り込み薄利多売でも黒字化を目指すという目論見であったのだと考えられる。
しかしながら、現状収益性の面から見ても黒字化を達成する水準にまではシェアを取り込めなかったようである。
それでは、今後どのようなマーケティング戦略をとるのであろうか?
それは既存サービスの値上げになるであろう。
シェアの拡大はある一定の水準で落ち着くため、それまでに黒字化を達成できなければ既存顧客の単価を上げる方向に動くのが自然だ。
しかし、値上げに関しては戦略上、非常に気を付けなければならない。
以前の記事でも紹介したが、コストパフォーマンスを売りにした場合、安さにメリットを感じなくなると顧客離れに繋がるケースは多いからである。
一方で値上げ戦略を採用するにあたり、freeeにとって有利である部分もある。
こういった会計システムは一度使い始めると他社への乗り換えは労力が大きい為、なかなか切り替え辛く、顧客側としてもむやみに乗り換えできないからである。
しかしながら、「どの水準まで顧客は許容できるのか?」について慎重に見極めないと顧客離れが加速する可能性はあるため、非常に難しい判断になるであろう。
freeeのサービス自体非常に使いやすいと評判であり、サービスそのものの成長性は非常に期待できる。
しかしながら、会社自体の収益性と財務体力には大きな懸念があり、今後採用するマーケティング戦略を誤ると大変厳しい状況に置かれるであろうことは留意すべきである。