東南アジアに行けば、屋台などでバッタやコオロギの素揚げなどが売られているのを見るのは珍しくない。こうした昔ながら昆虫食ではなく、養殖場で厳格に品質管理されたコオロギ製品を提供するマレーシアのスタートアップEntoが注目を集めている。
2018年に設立されたばかりのEntoは、ローストコオロギ(roasted cricket)やコオロギパウダー(100% cricket protein powder)などを販売している。(cricketはスポーツのクリケットだけでなくコオロギという意味もある。)
屋内のコオロギ養殖場を持ち、管理された環境で成長したら凍結した後に熱湯洗浄してバクテリアが取り除き、オーブンでゆっくりと焙煎している。生育から加工までに2ヶ月かかる。
弁護士だったケヴィン・ウー氏は、26際にして代替タンパク質食品を手掛けるEntoを起ち上げた。
ウー氏によるとコオロギは、
- 牛肉や鶏肉の3倍のタンパク質
- ケールの7倍の鉄分
- オートミールの4倍以上の食物繊維
を持つ栄養豊富な食品であり、
- 生育に必要な土地と水の量が少ない
- 温室効果ガスの排出が少ない
と持続可能な製品であると語っている。
ウー氏は
大学時代から持続可能な開発(SGDs)と気候変動に興味を持ち、昆虫食についての記事を読んだことが転身への切っ掛けだと言う。アメリカやヨーロッパでも昆虫食が少しずつ広がりつつあり、Entoの製品は米国やシンガポール、オーストラリアにも輸出されている。
冒頭画像(Ento公式サイトより)はローストコオロギのテキサスバーベキュー味であり、他に韓国キムチ味やシンガポール塩漬け卵黄味がある。
現在は資金調達を進めている最中であり、エンジェル投資家による投資が決まっている。最初の資金調達が実現すれば、現在の月間生産量50kgから2,500kgに増やし、世界最大のコオロギ生産者になると考えられている。
50kgと言えば微々たる量に思えるかもしれないが、水分を極力飛ばしているため軽く、ローストコオロギ1パックは13g、クリケットパウダーは25gであり、現在のオンライン販売のみとしては上々の滑り出しである。
資金調達をした後は欧米の昆虫タンパク質メーカーへの供給や、タイ・セブンイレブンやAmazonなど小売への展開も予定している。
今のところ「環境に良い食事」として植物性由来肉が流行だが、野菜にしても多くの農場など環境負荷が高く、健康への影響も大きいので、本当にSDGsやESGなどというなれば、昆虫食の方が良いだろう。
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元々東南アジアや中国には昆虫食の文化があるので、値段の高さなどネックはあるが、広く受け入れられる可能性がある。またローストコオロギの場合、抵抗感がある人が多いだろうが、粉末のものは他の食品に練り込むなどして使えるので、海外にも今以上に広がる可能性はある。また、この種のスタートアップは今後ますます増えてくるだろうとも思われる。
参考文献[2]:The Star Online, “Did you know cricket is a superfood, and M’sia is a producer?”, 10 Oct 2019