マレーシアがジョホールバル-シンガポール間の交通渋滞緩和に予算計上

2018年5月の政権交代による債務削減計画に伴い、マレーシアのジョホールバルとシンガポールを鉄道で結ぶ高速輸送システム(RTS Link)の計画が中断していたが、先日発表された2020年予算案およびリム・ガン・エン財務大臣による予算演説により、計画の再開方針が表明された。

マレーシアはコーズウェイとセカンドリンクの混雑を緩和するために2,800万シンガポールドルを投資し、RTSを「進めるつもり」(Channel NewsAsia)

  • 2020年予算にRTSに2,800万シンガポール(約22億円)を計上し、長期的な解決策としてのRTSリンクを「進めるつもり」と発言
  • 毎日30万人以上のマレーシア人がシンガポールへの通勤に使うコーズウェイの混雑問題の緩和は「差し迫った問題」
  • 予算では、税関、検疫を通る車両による交通の流れを改善する予定
  • バイク利用者のためのカウンターを50増やし、入国および高速道路のカウンターでの手続きを迅速化
  • RTSリンクは片道10,000人/時の乗客を運ぶ二国間の鉄道プロジェクトだが、マレーシアが延期を繰り返している(当初予定の2024年での完工は難しい)
  • 9月29日に10月31日までの再延長に合意したばかり
  • もしRTSプロジェクトを終了するならマレーシアはシンガポールに2億リンギット(約51億円)の違約金を払うことに合意している

解説

マレーシアのジョホールバルとシンガポールは、ジョホール・シンガポール・コーズウェイ(通称コーズウェイ)と、その混雑を緩和するために作られたマレーシア・シンガポール・セカンドリンク(通称セカンドリンク)がある。

どちらも土手道(海上などを横断して盛土を行って敷いた陸橋)であり、両国の高速道路と接続しているが、深刻な交通渋滞が発生している。ジョホールバルからシンガポールへの通勤・通学だけでなく、ジョホールバルにもインターナショナルスクールなど多くの学校が増えて移住者も増えており、また、イスラム金融センターの建設も進められており、今後ますます交通量は増えると見込まれている。

公共交通機関と言えばバスであるが、バスの場合、一度国境でバスから降り、チケットを持ったまま出入国手続きをした上で再度バスに乗るという煩雑なプロセスを踏まなければならない。

以下の記事では「陸路での国境超えは意外と簡単」と書かれているが、表示などが親切になったのは割と最近で、筆者が初めてバスを使ってジョホールバルからシンガポールに渡った時は、シンガポール側で待っているはずの「乗ってきたバス」の場所が分からず、炎天下の中、最寄り駅まで歩いた事は今でもよく覚えている。

参考:しらないどこかを旅したい「【マレーシア】ジョホールバルからシンガポールへとバスでの渡り方。陸路での国境越えは意外と簡単。」2019年2月27日

というわけで、以前からジョホールバルとシンガポールを結ぶ鉄道である高速輸送システム(RTS)、プロジェクト名RTS Linkは進められているが、マレーシア側の債務削減などの問題で延長が重なり、進んでいないのが現状である。

RTSが進まないからと言って、交通渋滞の対策を何もしないわけにはいかないので、2020年予算でカウンターを増やし、税関や検疫などの手続きを円滑化する方針のようである。

財務大臣は「長期的な解決策としてのRTSリンクを進めるつもり」と発言してはいるが、実態として予算計上されているのは上記のような既存の交通インフラへの対策であり、RTSについての具体的な施策については何も示されていない。

参考文献:Channel NewsAsia, “Malaysia to invest S$28 million to ease congestion at Causeway and Second Link, ‘intends to proceed’ with RTS”, 11 Oct 2019

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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