先日、ブラジルのアマゾンでの火災が、8月の約30,900件に比べ、9月は約19,900件と約35%減少したと報道された。
参考:日本経済新聞「アマゾン火災件数が減少 ブラジル、8月比35%減」2019年10月2日
恐らくこれで日本では完全に火災の事が忘れられてしまうだろうが、問題が終わったどころか事態はより深刻である。
以下はブラジル国立宇宙研究所(INPE)が示した地図で、8月に南アメリカで火災が発生した地域に赤点が示されている。緑色になっているところがいわゆる「アマゾン」と呼ばれるところで、広範囲で火災が発生したことが分かる。この地図の時点で、アマゾンの東側や隣国のボリビアの赤点が目立つだろうが、9月になるともっと状況が変わる。
そして以下が9月における発生箇所である。確かに8月に火災が多かったアマゾンの赤点は少なくなっているようである。代わりに大幅に増加したのが東側(薄い赤で示した地域)のセラードと呼ばれる地域での火災が増えている。
火災が発生した面積の推移を見てみると更によく分かる。以下はINPEのデータを元に、2017年以降の火災発生面積を「アマゾン」・「セラード」・「その他」で分けたものである。アマゾンでの火災も確かに多いが、それ以上に多いのがセラードであり、8~9月は特に深刻で、それ以外の地域での火災も増えている。
アマゾンという分かりやすい地域で火災が深刻化し、その対応が問題視されたことで大きな話題になったが、ブラジルでの森林火災は毎年深刻であり、そしてアマゾン以外の地域での問題の方がより深刻であることが分かる。
アマゾン環境研究所(IPAM)のアネ・アレンカー氏はBBCの取材に対し、火災が増えているセラードについて、
- セラードは世界で最も生物多様性が高い地域の一つで、生息する動植物の約40%は地球上の他の地域に存在しない
- 森林や湿地、草原などの約半分が失われており、その多くは大豆栽培のための森林伐採が原因
- セラードはWWFが「地球上で最も危険に晒されている生態系の一つ」と定める地域
と指摘する。アマゾンに対する焼き畑の禁止など各施策によって火災のペースは収まったものの、セラードでは同様の規制がされておらず、全体として見れば問題は更に悪化していると考えられる。
また、最初の地図を見てもきづいた人は多いと思うが、BBCはブラジル以外でも森林火災は大きな問題であると指摘している。ボリビアでも開発によって大規模な森林火災が発生している。ボリビアのエボ・モラレス大統領は、農民が農業のために現在の4倍の土地を開墾することを認める法令を承認したが、これに伴う火災の頻発で大規模な抗議行動が起こっている。
それでもボリビアの場合は大雨によって状況は大きく緩和されつつある。しかし、多くの地域は高い火災発生リスクがある。以下はINPEによる火災リスク予測を示したものだが、アマゾンは緑色(低リスク)を示しているが、ブラジルでも東部、南部のブラジル以外の国々では高リスクを示す赤色が拡がっている。
紹介したブラジルの火災発生面積の情報についてはポルトガル語ではあるが、
で参照できる。
参考文献:BBC, “Amazon fires: What’s the latest in Brazil?”, 12 Oct 2019