ベトナムの農業農村開発省(MARD)は、中部高原(ターイグエン)を中心に古いコーヒーの木の植え替えや、若い木の接ぎ木などを進めている。本稿では、ベトナムニュース紙記事をベースに、その背景や課題を整理する。
中部高原で植え替えられた118,202haもの古いコーヒーの木(Viet Nam News)
- 2014~2020年にかけて中部高原のコーヒー農園の98.5%に当たる118,202haの植え替えや接ぎ木が進み、品質と収量が上昇した
- ラムオン省ディリン地区では1ha当たりの収量が3.2tと平均2.6tを大きく上回る
- 植え替え費用は1ha当たり8,650〜12,960米ドルだが、銀行は80%までしか融資しないことから多くの農家は植え替えを渋っている
- MARDは2025年までに更に30,000~40,000haの植え替えを目指すと共に、コーヒー栽培に適さない地域での別の作物への植え替えを推奨している
- 副大臣レ・コック・ドアンは、地方当局による苗木の交換計画や資金調達補助を進めるべきと主張
- 2025年までに現在の690,000haの作付面積を600,000haに抑え、1ha当たりの収量を2.7~2.9tにすることが目標
解説
特定の作物の価格が上昇すると、多くの農家が一気に当該作物の栽培を推進する傾向が東南アジアでは多く見られる。コーヒーに関しても同様で、数年前までは高値がついていたので、本来はコーヒーの栽培に適さない地域でも栽培されるようになった。
そうすると当然供給過剰になり価格が下がるわけだが、そうすると管理が不十分になって低品質なコーヒーが市場に出回るようになって更に悪循環というのが今のベトナムコーヒー農家の現状である。
ベトナムで栽培が盛んなロブスタ種自体の高品質化を目指すという動きもあるが、それ以前に「持続可能な開発」という世界的な流れで見れば、単に高品質化にするだけでなく、コーヒー栽培に相応しくない土地での生産は止め、生産性を高めることで、品質と供給量を安定化させるのがベトナム政府の狙いである。
そのために新しい苗木に植え替えつつ、コーヒー栽培に適さない土地では別の作物に植え替えるように推進している。低価格で推移している胡椒に関しても同様の動きがある。
植え替えについては、もともとコーヒーの名産地である中部高原では98.5%と殆ど全ての農園で完了している。これはジョリビー(Jollibee)の傘下で上場を検討しているハイランズコーヒー(Highlands Coffee)の名前でも分かる通り、ベトナムで中部高原(Central Highlands)と言えばコーヒーというくらいの場所である。
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しかし、それ以外の場所ではなかなか植え替えが進まないのが現状である。1ha当たり8,650〜12,960米ドルというが、多くのコーヒー農家は小規模な零細農家であり、ベトナムの所得水準からして、この2割負担は非常に大きいものである。
参考文献:Viet Nam News, “118,202ha of old coffee trees replaced in Central Highlands”, 7 Nov 2019