2021年1月からセンター試験に代わって実施される大学入試共通テストにおいて、国語と数学では記述式問題が導入されることについて批判が多い。批判には様々なものがあるが、最も多いのはアルバイトも利用した採点による公平性に対する懸念であろう。
特に2018年11月に行われた国語のプレテストの記述問題で0.3%の採点ミスがあったことが問題を大きくしている原因だが、筆者に言わせればこれくらいは何の問題も無い。いや正確には何の問題も無いということにしなければ大学受験制度自体が成立しなくなる。
受験結果に影響がある人は0.3%よりもずっと低い
国語の場合、
- 従来のマークシート方式によるテスト:200点満点
- 3問の記述式問題:A~Eの5段階
で評価される。問題となっているのは小問1~3で構成される3問の記述式問題であるが、その採点方式は大学入試センターによると以下の通りである。
要するに各問a、a*、b、b*、cの5段階で評価し、3問についての組み合わせによってA~Eの段階で評価される。
0.3%の確率で採点ミスがあるということだが、例えば小問1で本来bである人がa*と評価された場合は最終的な大問の成績が変わってくるが、b*やcと評価されたとしても、それ自体は段階の評価に影響しない。
点数評価ではなく5段階という形にしているため、採点ミスしても最終的な評価が変わらない確率も高く、最終評価に影響が出る確率は0.3%よりも低い。
確率の試験問題に悩んでいる先生方は、最終評価に出る確率はいくらかという問題を出してみてはどうだろうか。時事ネタであり、かつ、なかなか骨が折れる確率問題になろう。
更に言えば、従来のマークシート方式の試験も行うわけであり、大学側も記述式問題だけで判断するわけではないので、受験の合否に出る影響はもっと小さいと言わざるを得ない。
1点が合否を分けると言うならば
それでも「受験生は人生をかけている。1点の差が合否を分けることもある。採点ミスがあってはならない。」という反論を当然してくるだろう。筆者も嘗ては大学受験を受けた身なので、その気持ちはよく分かる。しかし、制度設計を感情だけで考えてはならない。
1点が合否を分けると言うけれども、現在の大学受験制度は基本的に一発勝負である。うっかりミスがあるかもしれないし、たまたま体調不良があるかもしれない。マークシート方式ならたまたま勘が当たって高得点が取れるケースもある。
実際、ぎりぎり合格した人で、ぎりぎり不合格の人よりも学力が高いケースはよくあることは多く指摘されている。本当に学力を厳密に判断するならば何度も試験を実施しなければならない。
アルバイトを否定すれば二次試験も成立しない
大学入試共通テストの記述問題の採点に一部アルバイトも使うことに懸念を示す声も多い。そうだとすれば大学側が行っている二次試験の一部も成立しなくなる。
大学によっては(というか教授によっては)採点が面倒くさいのでゼミや研究室の学生にアルバイトとして(場合によっては無償で)採点をさせるケースは少なくない。二次試験の採点を学生にさせるケースは少ないだろうが、定期試験であればかなり横行しているのが実態である。
教授の裁量で学生にボランティアで採点させるような実態に比べれば、アルバイトとして大学生を雇い、採点基準を示した上で労働として採点させる方がよほど健全であり信頼できる。