PwC(プライスウォーターハウスクーパース)がEmerging Trends in Real Estate(不動産の最新動向)のアジア太平洋版を公開した。その中に投資見通しランキング(Investment Prospect Ranking)があるので、この部分を紹介しよう。
香港の影響でシンガポールが1位に返り咲き
シンガポールで住宅補助金の対象年齢引き下げでも少し触れたが、香港での一連の問題により、香港からシンガポールへアジア拠点を移す動きは強い。その結果もあり、以下の2020年の不動産投資見通しランキングでは、シンガポールが1位となり、対象的に香港は最下位となった。
以外に2位につけたのが東京である。レポートでも2020年のオリンピック以降の反動は大きいと考えられているが、海外を中心に行き先を探している資金は多く、金利が低く流動性が高い東京市場は魅力的と考えられている。
3位のホーチミンは、チャイナ・プラス・ワンの動きとして不動産開発が積極的であることが評価のポイントとなっている。但し、ハイリスクであることも事実で3位止まりといった具合である。
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シドニーやメルボルンなどオーストラリアはここ2~3年安定して高値の市場が続いているが、やや住宅価格に下落傾向が見られるなど相対的に魅力が薄れつつあるようである。
物件種別で見るとチャイナリスクが目立つ
他にレポートでは物件種別の売買シグナルも示している。ここではオフィスだけ引用すると以下のようになっている。
これによると、ホーチミンが買い推奨の1位となっている。どの物件種別でもホーチミンが1位になっており、強気である一方で全体の見通しが3位というのはそれだけリスクを高く見積もっているということである。
香港が圧倒的に売り推奨であることは当然分かるが、それ以外も深セン(Shenzhen)や中国二線都市(China-second-tier cities)、上海(Shanghai)、北京(Beijing)と中国が全体的に売り推奨の割合が高くなってきているのは注視すべきだ。
中国では都市がランク付けされており、一線都市~三線都市まで4つの等級に分かれている。
- 一線都市:北京、上海、広州、深セン
- 新一線都市:成都、杭州、重慶、南京など
- 二線都市:福州、昆明、無錫など
と見て分かる通り、二線都市ともなれば中規模の地方都市が多く、過剰投資のリスクが顕在化してきている地域でもある。単純にランキングだけではなく、こうした他の情報も含めて注意深く読む価値があるレポートと言える。
参考文献
PwC singapore, “Emerging Trends in Real Estate® Asia Pacific 2020”