ベトナムドンの対米ドル相場は3月の急激なドル買いの時は23,600VND/USD台まで下落したが、その後4月は23,400~23,500VND/USDで安定して推移した。これは新型コロナウイルスの封じ込めに成功した事による経済活動再開の早さと輸出の増加による。
実際、2020年1~4月の輸出額は829.4億USD(前年同期比4.7%増)に対し輸入額は789.9億USD(前年同期比2.1%増)で39.5億USDの貿易黒字を記録した。特に輸出は、輸出相手国上位2ヶ国である米国(203億USD:前年同期比13.4%増)と中国(131億USD:前年同期比26.7%増)の伸びが牽引した。(参考:ベトナム統計総局)
今後の見通しについては弱気な見方が多い。例えばフィッチは、2020年の平均は23,475VND/USD、2021年は23,650VND/USDとドル高基調の予想を示している。(参考:VietnamNet Global)
これはTPPと米中貿易戦争によって進んだ2019年のチャイナ・プラス・ワンの動きに伴うベトナムドン高に対し、コロナショック後の対内FDIの減少により割高なドン相場が是正されるという見方である。
他にも、(1)コロナ後の不況による外需減少(輸出の鈍化)、(2)ベトナム中央銀行が輸出のためベトナムドン安を好むといった理由も挙げられている。但し、過度の為替介入は米国からの制裁の強化に繋がりかねないので、ベトナムドン安の余地は比較的小さい(直近の最安値程度)と考えられている。
筆者も基本的にはこの考えに同意である。力を入れている観光もしばらくは軟調な状況が続きドン相場を下支えする要素が少ない。但し、対内FDIに関しては注意が必要である。1~4月は463.1億USD(前年同期比2.93%増)と増加している。4月に限れば減少しているが、それでも115億USD(前年同期比0.7%減)と微減であり、コロナによって大きく投資が減っているとは言い難い。当面は軟調な状況が続くとしても、チャイナ・プラス・ワンの流れは変わらないだろう。