要約
- TPP(CPTPP)の発効により、ベトナムの経済成長と輸出増が期待される
- 輸入品への減税による貿易赤字が拡大する可能性がある
- 産業によって影響の良し悪しが異なる事に注意が必要
ベトナムは繊維・衣服産業から400億ドルの輸出を目標(Viet Nam News)
- ベトナム繊維衣料品協会(VITAS)は、2019年の輸出目標を前年比10.8%増の400億ドルに設定
- 1月に発効したTPPが経済成長を1.3%、輸出を4%押し上げる効果があると見られている
- TPP加盟国から原材料の6割以上を輸入しなければならないが、現在は半数以上が中国からなので、企業は対応に追われている
ベトナムの輸出上の課題が貿易赤字を拡大するかもしれない(The Phnom Penh Post)
- 2019年1月の輸出は200億ドルに対し、輸入が280億ドルと貿易赤字に転じた。
- 輸入品価格の低下による税制上の優遇措置が輸入を押し上げたのが原因と見られる。
- TPPは新たな投資を呼び込むが、生産設備の購入など輸入も増加するので貿易収支の悪化傾向は続くとみられる
解説
2018年12月30日の日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、メキシコ の発効に続き、2019年1月14日にベトナムでもCPTPP(米国が抜けたTPPを11ヶ国で発展させたもの)が発効した。これで発効していない国はブルネイ、チリ、マレーシア、ペルー の4ヶ国となった。
全体的に輸出を押し上げる事でベトナムの経済成長を促す効果があるという論調が多く、特に繊維・衣料産業は強気の姿勢が見られる。この点に関しては米中貿易戦争も影響しており、みずほ総合研究所は、米中貿易戦争によるベトナムシフトにより、ベトナム経済には寧ろプラス効果があり、特に繊維産業へのGDP寄与効果が高いと試算している。
一方で、農村農村開発大臣グエン・スアン・クオンは2018年は世界的な輸出減少の恩恵を受けて過去最高の輸出額2,450億ドル、72億ドルの貿易黒字を達成したが、2019年の動向は非常に読みにくい年になるとの見方も示している。
今年は米中貿易戦争によるチャイナ・プラス・ワンの動きとCPTPPによる投資の活況化により、ベトナムは相対的に経済的パフォーマンスが高いと予想されるが、業種によって異なる点や財政面への影響には注意したい。
参考文献
Viet Nam News, “Việt Nam targets $40 billion in exports from textile and garment industry”
The Phnom Penh Post, “Vietnam’s export challenges may widen its trade deficit”
みずほ総合研究所「米中貿易摩擦のアジアへの影響 」(PDF)