6日、米中貿易戦争が注目される中、米国のメキシコに対する追加関税の延期検討が報道されるとS&P 500はや原油先物価格は大幅上昇した。
米中間では25%の関税が問題となっており、米メキシコ間では5%と関税率では低いが、後者も大きな問題となっているのは、その「産業内貿易」の多さである。
米国とメキシコの追加関税が経済コストを増大させる(PIMCO)
- トランプ大統領は”America First”のキャッチフレーズでメキシコからの移民を大きく問題視し、対抗策として追加関税を掲げているが、関税の影響を過小評価している
- 総貿易に占めるサプライチェーンに関係する産業内貿易の比率は、米中間では20~25%であるのに対し、米メキシコ間では約60%に達する
- 製造業全般、特に自動車産業が大きな影響を受ける
- FRBの利下げインセンティブを増大させる
補足
「サプライチェーンに関係する産業内貿易」とは、つまり「垂直的産業内貿易」のことである。
経済学的な分類で、産業内貿易とは特定の相手国と同種の製品を相互に輸出入することである。水平的産業内貿易と垂直的産業内貿易に分けられる。
水平的産業内貿易は、消費者の好みの多様化に併せて様々な製品を輸出入することである。例えば、大衆車とスポーツカーの輸出入であり、主に経済的に同等の発展水準の国家間で行われる。
垂直的産業内貿易とは、主に発展途上国から労働集約的な製品を輸入し、最終製品を輸出するものである。米国とメキシコの間で言えば、メキシコは自動車部品を輸出し、米国は組み立てた自動車を輸出する。
その垂直的産業内貿易の比率が6割を占めているということは、5%であっても関税による影響は非常に大きい。
国内の製造業にダイレクトに影響を与える度合いが大きいので、貿易相手国を変えれば済むという問題ではない。
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参考文献
PIMCO, “New U.S.–Mexico Tariffs Would Add to Economic Costs”, 5 Jun 2019