The Economic Timesが報じるところでは、インドの5月の金輸入量は116トンで、前年比で49%増加したと政府関係者が証言している。輸入額では前年の34.8億ドルから37.3%増の47.8億ドルである見込みだ。
インドの金需要は世界第二位の多さだが、5月の急騰の背景は複雑である。
- 2013年8月に輸入関税10%上昇で金の密輸が急増
- 2017年の地金の売上税3%賦課によって密輸が更に急増
- インドでの金の国内価格が低下傾向
- 2019年4月の選挙不正の取り締まり強化によって密輸量が急減
- ヒンドゥー教とジャイナ教の祭りアクシャヤトリティヤ(今年は5月7日)によって金需要が急増
増税による金密輸によって国内の金供給がだぶついていたが、先日の総選挙に伴う選挙不正の取り締まりによって密輸業者も一時的に鳴りを潜めていた。
以前、インドの総選挙に多額のコストがかかる背景の一つに買収といった「選挙不正」があると指摘したが、買収に金(ゴールド)を使うケースも多いので、密輸業者への警戒も強まっていた。
関連記事:8,000億円もかかるインドの選挙
そこに、 ヒンドゥー教とジャイナ教の祭りアクシャヤトリティヤが重なった。これは直訳すると「果てない繁栄の3日目」を意味し、春の月の3日目(旧暦3日)に行われる。この日は非常に縁起の良い日とされ、金などの財産に高額な投資を行うのが良いとされる。
今年は5月7日がこの日であり、ちょうど総選挙期間と重なった。選挙によって密輸量が大幅に減少する中、祭りによって金需要が一気に増えたことで、前年比49%増もの金輸入量を記録したのだ。
一方で、最近は金価格が上昇しているので、その反動として金輸入量が大幅に下落する可能性が高い。但し、先月の金輸入の急増は貿易赤字を拡大させると思われ、ルピー安に働く可能性もあるだろう。
参考文献:The Economic Times, “May gold imports jump 49% on festive demand: Source”, 4 Jun 2019