熱波、バッタ、サイクロン、コロナ

人口100万人当たりの新型コロナウイルス死亡者は6人と低めに抑えられているインドだが、高齢化率6.2%の国と若い世代が多い国なので、ベトナムと同様にコロナは政府の危機感に比べれば大きな脅威ではない。(日本は100万人当たり死亡者は7人、高齢化率は27.6%。)

寧ろ、今大きな話題になっているイナゴによる食糧不足の懸念、自然災害として毎年大きな犠牲者を出すサイクロン、そして熱波である。特に熱波による熱中症死者は統計に残っているだけで年間数千人を超える。「釈迦が現世を地獄と考えたのはインドの暑さが原因」という説があるように、その暑さは過酷で、45度を超えることもある。

統計に残らない熱中症死者が多く、その死者を特定できないことも多い。特に貧困層においては冷房が無い場合が多く、死因が熱中症なのか、或いは食糧不足による健康状態の悪化が要因なのか十分に特定されていないケースが多い。

インド公衆衛生研究所の所長であるディリップ・マバランカー博士は、今年の熱波は深刻なので、全ての都市の死亡原因を明確にし、熱中症による死者も明確に把握すべきと強く主張した。

熱中症の兆候として頭痛や嘔吐、下痢など様々な症状がある。しかし今は新型コロナウイルスに伴うロックダウンの影響で、院内感染や病院に行く事自体の偏見(知人にコロナを疑われる)を恐れたりする人が症状が出ていても病院に行かない人が増えているという。勿論、貧困で病院に行けない人もいる。

要は、今のインドはコロナに対する意識が強すぎて、他の様々な公衆衛生上の問題が軽視されれば、結果的に多くの死者が出てしまう可能性が懸念されているわけである。

日本もマスクをしている時に熱中症にならないように気をつけるべきという報道がされるようになってきたが、このように特定の感染症の死者にだけに囚われず、全体をバランス良く見るというのは非常に重要なことである。

参考文献:The Indian Express, “Heat stroke deaths: Cities need to monitor all cause mortality, says expert”, 28 May 2020

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