8,000億円もかかるインドの選挙

4月11日からインドで総選挙が開催される。5月19日までの間に7回の投票日がもうけられ、各選挙区はこのうち1日を選んで投票が行われることになる。開票日は5月23日である。

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このように1ヶ月以上もかけて選挙が行われるのは、インドの国土の広大さと人口の多さに起因し、それに伴って高コスト体質が生じると思ったが、それだけでなく、どうやら様々な事情があるらしい。

ニューデリーのメディア研究センターによると、次のインドの総選挙では5,000億ルピー(約8,000億円)もかかり、2016年の米国大統領選挙と議会選挙でかかった65億ドル(約7,200億円)を上回るという。

人口が多いから当然だと思うかもしれないが、多くの人が1日に3ドルで生活している中、1人当たりの選挙コストは8ドルもかかっているのだ。(米国では1人当たりの選挙コストは約23ドルだったが、1人当たりGDPは約30倍だ。)

このコストの大部分は政党がかける選挙運動費用であるという。これだけかかる理由には、以下のようなものが考えられている。

ソーシャルメディア広告と地形によるかさむ移動費

国土が広い分、移動費だけでも大変なものになる。その中にはタール砂漠やヒマラヤ山脈などもあるので、候補者が移動するだけでも一苦労であり、場合によってはヘリコプターも必要となる。

最近の潮流としてソーシャルメディアによる選挙運動が主流となっており、2014年の議会選挙でかかったソーシャルメディア支出費25億ルピー(約40億円)が500億ルピー(約800億円)に急増すると予想されている。

これは選挙運動費用だけでなく、選挙管理委員会がかけるコストにも関係する。ヒマラヤ山脈の高標高地域や西インドのジャングル奥深くの小村の選挙運営費用が大きな問題となっており、場合によっては電子投票機を運ぶのにゾウが使われることもあるようだ。

熾烈な候補者争いと選挙不正

次の選挙では545議席に対して立候補者が8,000人を上回る14.7倍の争いである。日本の地方選挙なら倍率が1.2倍~2倍くらいが多いのに比べれば、かなりの競争率だと言えるだろう。『競争の科学——賢く戦い、結果を出す』で「当選確率が20%を下回ると女性が立候補が大きく抑制される」とあるように、選挙においては5倍を超えると博打とみなされる傾向にあるのだ。

そうなると賄賂問題が生じやすくなる。インドの連邦政府の政治家の90%以上が、同僚である政治家が現金や酒などを贈っているのではないかというプレッシャーを感じているという。賄賂は多種多様で、テレビや場合によってはヤギなども配られるようである。

2018年にはカルナータカ州の選挙管理委員会は、13億ルピー(約20億円)以上の現金や金、酒、麻薬などの未払いの賄賂を押収しており、選挙運動費用だけでなく、国による不正防止のためのコストも多くかかっていると思われる。

集会好きの国民性

国民性を利用し、政治家も積極的に集会を開く。その際には人々を集めるためにカレーなどを提供(これは賄賂にならないらしい)し、注目を集めるために爆竹を利用し、混乱を避けるために警備員を用意すると、とにかく大規模になりがちである。

似た名前の候補者の乱立

身分であるカーストやジャーティ(職業・地縁的集団)によって名前に特徴が出る事が多いインドでは、とにかく似た名前のダミー候補者が溢れかえるという。2014年には女優のHema Maliniに対して2人のHema Maslinisというダミー候補者がいたという。

日本においても稀に同姓同名の候補者が出現することはあるが、投票を分割させるために意図的に同姓同名候補を出すことは難しいし、そもそも倍率がそこまで高くないので実際に騙される人は少ないだろう。いかに競争が熾烈かというのが、こうした点にも現れている。

参考文献

Bloomberg, “Why India’s Election Is Among the World’s Most Expensive”

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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