昨日14日、ベト・オルーク(Beto O’Rourke)氏が、米国大統領選の候補者として立候補を表明した。2013年から6年間下院議員を務めた民主党のホープである。2018年のテキサス州での上院選では現職のテッド・クルーズ氏に敗北しているものの、オルーク氏は得票率48.3%と僅差であった。
地元テキサス州の若い有権者や「草の根」の活動家を中心に持ち上げられ「オバマの再来」と呼ばれているが、現時点の民主党候補者の中で見れば最も「右側」に位置し、「最も進歩主義的(most progressive)」を掲げようとしている今の民主党の中では異色である。実際、
- エネルギー改革と再生可能エネルギーの推進を支持しているが、グリーンニューディールのCO2排出量のネット・ゼロ化までは言っていない
- 国民皆保険の提供を掲げているが、民主党が主張する単一支払者精度によるユニバーサルヘルスケアを目指すMedicare For Allに限定しているわけではない
- 問題となっている学資ローンの為の支援を主張しているが、同じく民主党大統領候補者フリアン・カストロ氏が掲げる公立大学の授業料無料化の支持は保留している
など、様々な分野に関して非常に穏健な立場である。
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また、バーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏のような社会民主主義者による大企業嫌いに対してはより明確に距離を置いており、以下のように記者に対して答えている。
私は資本主義者です。ある程度は市場の力を利用せずして、国が抱える根本的な問題にどうやって対応できるのか検討もつきません。
CNBC
また、2018年の選挙ではテキサス州の刑務所精度改革が焦点になっていたが、それに関する主張として、
- 貧困を招いている現在の保釈保証制度の廃止
- 深刻な暴力問題と刑務所への収監を阻害するインセンティブを持つ民営刑務所の規制
- 連邦レベルでのマリファナ合法化
といった、若者や少数民族の支持を受けやすい政策を掲げている。
米国では保釈保証ビジネスが盛んで、これは保釈保証業者が被疑者の保釈金を立て替える代わりに手数料を受けるというものである。保釈保証業者を利用した被疑者は、逃亡・証拠隠滅のリスクが高く、保釈金の本来の目的である逃亡・証拠隠滅の抑止力として働かず、抑止力を高めるためにどんどん保釈金が上がっていくという悪循環が発生している。
例え逃亡しなかったとしても手数料が負債として残るわけで、現実的に保釈保証業者の利用者となりやすい若者や少数民族にとっては大きな問題となっており、そこを狙ったものと思われる。
移民問題に関しては、トランプ大統領の国境の壁には明確に反対しているものの、どう扱うべきかについては、まだ明確なスタンスを明示していないが、穏健であることは確かだろう。
筆者としては、まだ立候補を決めかねているジョー・バイデン氏と並ぶ穏健派であり、民主党のスタンスに合わないのは分かるが、この2人のどちらかが大統領選に出た方がトランプ大統領にとってリスクだと考える。(穏健派の方が、より広い支持者を得られやすいので。)