マハティール首相はマレーシア東海岸鉄道(ECRL)を酸っぱい葡萄路線で解決を模索

マレーシア東海岸鉄道(ECRL)は以前言及したように「財政負担」と「地元業者への恩恵」のトレードオフ問題で板挟みになっている。

計画をそのまま続けても中止しても財政負担は大きいのが問題で、規模を縮小して継続すれば地元業者への恩恵は少なく国民の理解が得られにくい。

マレーシア東海岸鉄道(ECRL)はまだ終わっていない

マハティール首相は「交渉中」というスタンスを続けているが、South China Morning Postでの独占インタビューとフィリピンへの公式訪問から具体的な落とし所が見えてきた。

まず、インタビューに対しては相変わらず「大幅に値下げすることに同意した場合のみ」プロジェクトを実施するという意見は変えていない。これは一帯一路からの反発が政権獲得に大きく寄与したこともあり、簡単には反故にできない。

但し、経済的な影響や今後の外国直接投資の冷え込みを危惧すれば、過激な事を言い過ぎても悪影響が強く、その意味で以下のように中国に譲歩する発言も見せている。

我々の中国に対する態度がどうであれ、中国が強大であることは認めねばならない。(…)我々は彼らの政策や戦略を理解する必要があり、中国の政策から何らかの利益を得ることができるように調整せねばならない。

South China Morning Post

更に、一帯一路構想自体にも理解を示すような発言もしている。

(一帯一路の)関係国は、自国で何が可能で、何が必要なのかを区別できなければならない。もし当事者が莫大な金を借りることを好むなら、その国の決断ということだ。

South China Morning Post

では、発言が大きく軟化したのかと思えばそうではなく、フィリピンに公式訪問した際には次のような助言を行っている。

中国から巨額の金を借りた挙げ句それを返せないとしたら、借り手は貸し手の支配下に陥ってしまう。だから我々はこの事に強く注意しなければならない。(…)(そしてフィリピンのような国は)中国からの影響を規制もしくは制限するべきである。

The Straits Times

中国メディアに対してだけ軟化姿勢を示しているとも読めるが、筆者の考えはそうではない。ECRLについて次のように評価しているからだ。

ROI(投資収益率)は無い。ローンの返済には40年、50年とかかる。だから我々は他国からあまりにも多くの負債を抱えるのを避けたい。

South China Morning Post

元々、ECRLは国の成長の要であるが、前政権の契約では莫大な金額となってしまうのが問題で、かつ、事業を縮小すれば経済効果が小さくなってしまうという論点であった。それなのに今は、

首相は、プロジェクトについて懐疑的な見方をしている理由について、プロジェクトの事業は東海岸に集中しているが、鉄道の営業地域は人口がまばらであり、鉄道の収益性もないとしている。

South China Morning Post

と、そもそもプロジェクト自体が無意味だという発言に変わってしまっている。

これは本音では「強硬的にプロジェクトを停止したい」が、違約金や経済的な悪影響が大きい印象を与えないようにプロジェクト自体の存在意義を否定しているのだ。これはまさに「酸っぱい葡萄」であり、違約金を払ってプロジェクトを停止することの悪影響が小さいと印象づけようとしているように見える。

参考文献

South China Morning Post, “Malaysia’s Mahathir: green light for China-backed East Coast Rail Link – if price is right”

South China Morning Post, “I’d side with rich China over fickle US: Malaysia’s Mahathir Mohamad”

The Straits Times, “Beware of China ‘debt trap’: Mahathir Mohamad”

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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