要約
- マハティール首相はECRLプロジェクトの交渉が続いていると発言
- マレー系に妥協するような華人系・中華系メディアの報道が増えている
- 継続・中止・縮小継続いずれにおいても問題が多く、解決の目処は立っていない
ECRLが中止されるか否かについてマハティール氏は「まだ交渉中である」(Channel News Asia)
- マレーシアのマハティール首相は、ECRLプロジェクトの最終決定は行われていないと発言
- 前政権の「高過ぎる見積もり」に注意を払うと改めて強調
- 中止以外の選択肢も色々と考えられると補足
ECRLがスタートすれば国内の請負業者の参入を増やすべき(Bernama)
- マレーシア華人協会(MCA)副会長のTi Lian Ker氏はBernama紙のインタビューに答えた
- 「プロジェクトが再開すれば地元の請負業者が多く参入できるように検討するのが良い」
- 「マレーシアが独自の持続可能な鉄道会社を持つことも重要」
ECRLの資金構造が維持されれば、請負業者の利益は限定的に(The Edge Markets, CGI-CIMB)
- 計画をそのまま継続すれば、約1.8兆円の建設費への(計画凍結を理由とした)余分な利子による財政的影響が大きい
- 計画を終了した場合、建設・試運転請負業者などへの補償金による財政的影響が大きい
- 規模を縮小して継続した場合、現地の請負業者が新たに参入する余地は小さい
解説
マレーシアのマハティール首相は前政権の不正や過度な財政支出を多く見直しており、その一つがECRL(東海岸鉄道)計画である。各国で中国の一帯一路構想に反発する動きが出ており、中国輸出入銀行(エクシム・バンク・オブ・チャイナ)からの資金調達や中国交通建設(CCCC)の開発受託など、過剰な財政支出や国内事業者へのメリットの薄さなど、多くの問題が指摘されていた。
日本では昨年5月に「マレーシア東海岸鉄道計画延期で合意」と報道されて以降、殆ど報道されていないが、今年1月にマハティール首相が交渉の継続を発言するなど、新たな動きが出てきている。
実際に前政権には1MDBなど数多くの不透明な資金の流れが指摘されており、見直す事自体には何の問題は無いが、凍結や中止とまでいくと経済的な影響が大きいというのは冷静な見方である。
ECRLは成長著しいマレーシア経済において、人の移動だけでなく、パーム油の輸出など、高速鉄道開通による貿易面への好影響も財政計画に入っている。
最近はマレーシア華人協会副会長によるコメントなど「火消し」のような記事も増えているが、問題はそう簡単ではない。CGI-CIMBによる分析にある通り、計画をそのまま続けても中止しても財政負担は大きいのが問題で、規模を縮小して継続すれば地元業者への恩恵は少なく国民の理解が得られにくい。
現時点では妥当な落とし所が見えにくいが、今後も当サイトではECRLについて継続して追っていきたい。
参考文献
Channel News Asia, “‘We are still negotiating’: Mahathir on whether ECRL will be cancelled”
Bernama, “Local participation should be enhanced if ECRL takes off”
The Edge Markets, “Limited gains for contractors if ECRL funding structure remains”