要約
- ベネズエラの外貨準備の2/3は金(ゴールド)として保有されていると考えられている
- 国民の貧しさを利用した方法で殆ど無価値となった紙幣を金に変えてトルコに輸出している
- 金価格に影響を与えかねないので注視が必要である
原油を忘れよ:ゴールドこそが危機に瀕したベネズエラ政府にとっての鍵だ(CNBC)
- 極端な財政状況に陥った国は大量の金準備を放出する傾向がある
- ベネズエラの外貨準備の2/3は金で保有されていると考えられる
- ベネズエラの金準備の一部はイングランド銀行に預けられている
- トルコやUAEはベネズエラから金を購入する事を控えるように米国が圧力をかけている
謎のトルコ企業が暗躍か、ベネズエラから9億ドル相当の金を輸入(Bloomberg)
- ベネズエラのマドゥロ大統領がトルコを訪問した2ヶ月後に謎の企業「サルデス社」がベネズエラから4,100万ドル相当の金を輸入した
- 米国がトルコに金取引の中止を警告したときには、既にサルデス社は9億ドル相当の金を輸入していた
- 米政府高官は、米国とトルコの同盟関係は今や実質的に崩れていると発言
ベネズエラはいかにしてその紙切れの紙幣を金に変えているのか(Reuters)
- マラリアが蔓延する国境近くの劣悪な環境の鉱山で貧しい鉱夫が金を手掘りする
- 鉱夫は業者に金を売り、僅かな食料と衛生用品を手に入れる
- 業者に対して国はプレミアムをつけて紙切れ紙幣を支払って金を買う
- 密輸業者に金をトルコに輸出してもらいドルを手に入れる
解説
米国によるベネズエラへの経済制裁(原油輸入制限)や外貨不足によるハイパーインフレは日本でもよく報道されているが、海外の報道では寧ろ主眼が「金(gold)」に主軸が移ってきている。原油での外貨獲得が難しいので、金の密輸で米ドルを取得する事に躍起になっているわけだ。
それに対して米国は各国に対して金を輸入しないように圧力をかけたり、イングランド銀行にある金準備を引き出させないようにしたりとしているが、全て後手後手に回っており、対するベネズエラもあの手この手で金を輸出しようとしている。
ロイター通信がベネズエラの鉱山から海外の金精製所や輸出業者などを追跡してインタビューをして集めた情報は凄まじいものである。劣悪な状況下での生活の足元を見た「紙切れと貴金属の交換」から始まる外貨獲得方法をロイター通信は以下のように表現している。
Venezuela’s most successful financial operations in recent years have not taken place on Wall Street, but in primitive gold-mining camps in the nation’s southern reaches. (ベネズエラが近年最も成功した金融業務は、ウォール街ではなく、国南部の金採掘キャンプで行われているのです。)
世界経済後退リスクや中国による金の大量買い付けなどで金価格は上昇傾向にあるが、ベネズエラの動きも金価格に影響を与えると考えるので注視が必要であろう。
参考文献
CNBC, “Forget oil: Here’s why gold is key to Venezuela’s crisis-stricken government”
Reuters, “How Venezuela turns its useless bank notes into gold”
Bloomberg, “謎のトルコ企業が暗躍か、ベネズエラから9億ドル相当の金を輸入”