Data Trekの共同設立者のNicholas ColasがZeroHedgeに株式市場の相関関係についての論考を寄稿している。内容としては以下のようなものである。
- 米国株式、EAFE(米国以外の先進国)株式、新興国株式の30日間相関係数が依然として高いままである。(EAFEとは0.87、新興国とは0.79)
- 米国内ではテック株と工業株のいずれもがS&P500と非常に相関が高い。(0.94と0.91)
- 世界の株式市場の相関が高いのは米中貿易交渉の行方に注目が集まっているからである。
- 特に、「海外売上高が多いテック株」と「国内売上高が高いが固定費が高く、関税や世界経済の影響を受けやすい工業株」の相関が高いのが、「何よりも投資家が世界の情勢を気にしている証左」である。
- 今後のシナリオとして、米中貿易交渉がうまくいった場合は、各地域・セクター・資産クラスのリスク精査が行われて相関関係が低下する。
- 交渉が決裂した場合は、世界的な景気後退の懸念からリスク資産が暴落して更に相関関係が高まる。
世界のリスク資産が一つの基準で判断されて同じような価格変動を行う事が”One-Decision Market”(ワン・ディシジョン・マーケット)と呼んでいるようだ。
現状は世界中で米中貿易交渉の動向に一喜一憂する状態が続いているが、部分的に見れば米国内のセクター内相関が低下しつつあり、投資適格債(相関係数0.12)、長期国債(相関係数-0.63)、金(相関係数-0.39)など、ポートフォリオを多様化する余地も大きいことも指摘している。
世界が米中貿易交渉の行方に大きく注目しているのは確かだろうが、インターネットの普及やシステムトレードの普及で長期的に市場間の相関が高くなっている傾向があるので、「米中貿易交渉」が内生変数として働いている可能性がある。なので相関だけを追っていくのは危険だろうがが、今後のシナリオとしては両パターンとも十分に有り得るのではないかと思う。
参考文献
ZeroHedge, “Correlation Math: The One-Decision Market”