日本は10連休だったので、連休中の市場の急変を警戒していた人が多かったと思われる。なので、トランプ大統領による対中関税を25%に増加させる方針についてのツイートは、最近の楽観的なムードの中では驚くべきことであっても、大損害になるという人は少ないかもしれない。
マーケットが荒れる可能性は高いが、冷静に次にどうなるかを考えるのが大事だ。それを考えるヒントになるのが次の記事である。
米中貿易戦争で次に起こりうること:ゴールドマンサックス(CNBC)
- 対中関税引き上げの方針は、米中貿易交渉が「行き詰まっている可能性」を示唆
- 8日からの閣僚協議に中国の代表団が出席するならば関税引き上げは回避可能
- 協議の実施の有無が投資家にとって重要なシグナル
- 協議がキャンセルされれば短期での合意の可能性は非常に低くなり関税が引き上げられる
- 協議が順調に進行すれば、大統領令によって政策を撤回するという望みがある
補足
ゴールドマンサックスは「週末までに関税が引き上げられる可能性は僅かに上がり40%」とコメントしており、比較的楽観的な姿勢を崩していない。そこまで楽観的になるべきかどうかは疑問だが、悲観的になって投げ売りに走ってしまうことも問題だろう。
記事で指摘されている通り、5月8日に中国の代表団が訪米して閣僚級協議が実施されるかがポイントだ。
これまで楽観的なムードが続いてきたのは「米中貿易交渉を破談させればマーケットへの影響が甚大なものになる」という危機感から、そこまで強く当たらないだろうという見込みからであった。筆者も基本的にはこのスタンスである。
その流れで考えれば、トランプ大統領のツイートは「脅し」である。中国に対して強硬路線を迫る米国議会と、マーケットへの影響を鑑みた上で「中国との交渉を継続させるための脅し文句」であり、これをもってすぐに関税引き上げということにはならない可能性は十分にある、というのがゴールドマンサックスの見方だ。
しかし、この脅し文句から交渉を継続することになれば、交渉は更に長期化する可能性があり、来年の大統領選挙までに何らかの成果を出せるかに注意しなければならない。
参考文献
CNBC, “Goldman Sachs: Here’s what could happen next with the US-China trade war”, 6 May 2019