株式投資家が貿易について知っておくべき5つの事

BloombergがFive Things Stock Investors Should Know About Trade Right Now(株式投資家が今すぐに知っておくべき5つのこと)というタイトルで記事をまとめていた。それほど深い内容ではないが、簡潔に今の動向を捉えられているので、筆者の補足を交えながら紹介していく。

ウォール街は懐疑的

ゴールドマンサックスとシティグループは、米国と中国の貿易協定が成立する可能性があると楽観的である。

これについては先程の記事で紹介した内容を指している。前日のダウ平均株価が大幅反落で一時471ドル安に達したものの、その後大きく買い戻され41.15ドル安で引けたことは、様子見の印象が強いと思われる。

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素材株とテック株が最も打撃を受ける

ダウ・デュポン株が前日比3.03%安など化学メーカーなど素材株が大きく下落した。オーストラリア・コモンウェルス銀行は米中貿易戦争の激化によって「卑金属(ベースメタル)が最もマイナスの影響を受ける」と指摘している。

また、アップル株が3.9%安などテック株の下落も目立ち、今後数ヶ月間は強く警戒すべきとされる。

いわゆる「通常の貿易」の犠牲者

米中貿易交渉の決裂懸念ということで、農業株の他、穀物価格が大きな影響を受けた。特に、米国の大豆・とうもろこし・小麦に課されていた重い関税が撤廃されるという見込みで動いていたこともあって、穀物先物価格は42年ぶりの最低水準まで下落している。

筆者としては、穀物関連株などの下落が過剰反応であると考えている。関税をダイレクトに影響を受ける銘柄であるが、冷静に業績などを見て中期的に判断すべきである。

ホットIPO銘柄は損失を回避

ビヨンド・ミートは前日比4.09%、ピンタレストは前日比4.02%など注目度が高いIPO銘柄は、マクロの懸念を覆すような高値をつけている。

もっともウーバーの決算発表など今後の懸念も大きい。筆者としても今から手を出すのはおすすめできない。

いくつかの新芽

米国株の大幅下落からの反発を支えたのは一握りのアウトパフォーマーである。これは、10連休前に指摘した「一部の銘柄で株高を牽引しており、日経平均株価とTOPIXの乖離を生んでいる」という実態と変わっていない。但し、TOPIXが日経平均株価に追いつくという方向には進まない可能性が高くなってきた。

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特に顕著なのは、規制当局の支援を受けたEsperion Therapeutics Inc.やAxsome Therapeutics Inc.といった小型製薬企業である。

補足

記事全体の構成として、ネガティブな情報を間に入れ、最初と最後をポジティブな情報で挟む典型的な「マーケットに良い印象をもたせよう」とするものになっている。そこには注意したい。

参考文献

Bloomberg, “Five Things Stock Investors Should Know About Trade Right Now”, 7 May 2019

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