「深刻な状態」にある米国学資ローン残高は1660億ドルを超える(Bloomberg)
- 3ヶ月以上の延滞、もしくは債務不履行になった学資ローンは延滞債務は第4四半期に1,660億ドルに達し、残高は過去最高水準となっている。
- 失業率は4%を下回っており、雇用状態は堅調である。しかし延滞は増え続けており、所得の伸びは債務返済に追いつけていない現状である。
- これらの背景には授業料の増加が背景に挙げられる。
- セントルイス連邦準備銀行は大学を卒業しても所得の面でそれに見合うコストパフォーマンスを挙げられていないとの意見を投稿している。
解説
学資ローンの残高の増加については日本にはない以下のような米国特有の事情がある。
- 学歴至上主義である点(大学名、修士や博士であるか等)
- 大学の学費がとてつもなく高額である点
米国では、一般的に就職時は日本のように新卒一括採用ではなく、ポジションが空いた際に採用するような職務を限定した即戦力重視の採用方式である。よって、新卒者が中途採用とポジションを争うことになる。新卒者がその中でより高給な職業に就こうとすれば、アピールする点として学歴は必須になってくるのである。
一方で学費は有名な私立大学クラスになると年間4~5万ドル相当となり、有名企業の中には更に修士や博士を取得が条件となっているところもあり、学費負担は非常に大きい。以上の背景から、学資ローンを借りる学生は多いのである。
しかしながら、高給と言われているような金融機関、コンサルティング会社、その他有名企業は非常に狭き門であり、ごく少数の学生しかたどり着けないのが現状である。それに加え、米国では解雇が日本よりも簡単にできることから、それら狭き門を潜れたとしてもその中で生き残っていけるとは限らないのである。
したがって、狭き門を潜れず期待した高給を得られなかった人や、狭き門を潜れたが生き残れず継続的にハイリターンを得られなかった人が大半であり、高額な学費というリスクに対してハイリターンを得られない現状がこの問題の原点となっている。
参考文献
U.S. Student Debt in ‘Serious Delinquency’ Tops $166 Billion